エキサイゼリ

エキサイゼリ（Apodicarpum ikenoi）

エキサイゼリは、セリ科に属する日本特有の多年生植物で、「オバゼリ」とも呼ばれています。この植物は、越中富山藩の藩主、前田利保が江戸郊外で初めて採集し、その名にちなんで名づけられました。エキサイゼリ属のApodicarpumは、日本独自の属で、他の地域には見られない特異な植物群を構成しています。

特徴

この植物は、通常約30 cmの高さに達し、全体的に毛がなく、柔らかな茎をもっています。茎は基部で分枝し、斜めに立ち上がります。葉は互生しており、羽状複葉で、葉柄を持つことが特徴です。小葉は柄なしで、通常1対から4対に分かれ、長さは1-3 cm、幅は0.5-1.5 cm程度です。小葉には鋸歯があり、これもまたこの種の識別に役立ちます。

エキサイゼリの花は5月ごろに咲き、複散形花序を形成して茎の先端に位置しています。小さな白い花は、5-6本の花柄に付いており、総苞片が1-2個、小総苞片が2-3個存在します。花弁は5個あり、上部が内側に曲がる形状をしています。雄しべは5本で、花弁よりも短いため、花全体の中で統一感のある見た目を持ちます。果実は長さ2-3 mmで、特徴的な隆起した条が太くコルク質で、分果柄は見られません。また、成熟しても果実の色は緑色のまま変わらないことも、一つの特徴です。

エキサイゼリは、Similarな植物であるヌマゼリと混同されることがありますが、主に分果の違いにより、容易に区別することができます。

分布と生育環境

この植物は、日本の関東地方や濃尾平野の湿地に自生しており、特に渡良瀬遊水地の広大なヨシ原で目にすることができます。春にはこの地域で「ヨシ焼き」が行われ、立ち枯れたヨシが取り除かれることで地表に日光が入るようになります。これはエキサイゼリを含む多様な希少植物が生育するために重要な環境作りに寄与しています。特に、トネハナヤスリやタチスミレといった他の珍しい植物も、この環境の恩恵を受けています。

保全状況

エキサイゼリは、環境省のレッドリストにおいて「準絶滅危惧（NT）」と評価されています。これからもその生息地の保全が求められます。

参考文献

• - 大場, 秀章『日本の固有植物図譜』ウッズプレス、2020年。
• - 大橋, 広好、門田, 裕一、邑田, 仁 ほか 編『日本の野生植物』 5巻（改訂新版）、平凡社、2017年。
• - 牧野, 富太郎 著、邑田, 仁、米倉, 浩司 編『新分類牧野日本植物図鑑』北隆館、2017年。

エキサイゼリは、日本特有の植物として、その生態や役割について知識を深めることが重要です。

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