エグベルト・ジスモンチ

エグベルト・ジスモンチ：ブラジルが生んだ天才音楽家

エグベルト・ジスモンチ（Egberto Gismonti, 1947年12月5日 - ）は、ブラジル・リオデジャネイロ州カルモ出身の、作曲家、編曲家、音楽プロデューサーとして世界的に知られるマルチ楽器奏者です。彼の音楽は、クラシック、ジャズ、ブラジル音楽、民族音楽など、様々なジャンルを融合させた独特の世界観を持ち、多くのミュージシャンに影響を与えています。

生い立ちと音楽との出会い

1947年、音楽一家に生まれたジスモンチは、幼少の頃から音楽に囲まれた環境で育ちました。5歳でピアノ、フルート、クラリネット、音楽理論のレッスンを受け始め、10歳でギターを独学で習得。その後、10弦、12弦、14弦といった多弦ギターや、両手タッピング奏法といった高度な演奏技術をマスターしていきます。8歳から15年間はピアノを専門的に学び、クラシック音楽の素養も身につけました。

1964年には、ウィーンでクラシック音楽を学ぶための奨学金を獲得しますが、ポピュラー音楽への関心が高まり、辞退。

歌謡曲からインストゥルメンタルへ

1968年、作曲家として頭角を現し、100人編成のオーケストラを従えた楽曲「O Sonho」が、リオデジャネイロのテレビ局主催の国際歌謡祭で高い評価を得ます。1969年にはフランスに渡り、歌手マリー・ラフォレの指揮者、編曲者として活動する傍ら、ジャン・バラケやナディア・ブーランジェに師事し、音楽理論をさらに深く学びました。同年、ファーストアルバム『エグベルト・ジスモンチ』をリリース。

1970年代に入ると、インストゥルメンタル音楽への傾倒を深め、1973年までにEMI/Odeonから3枚のアルバムをリリース。これらの作品は、シンセサイザーやオーケストラを駆使した斬新なサウンドで、各方面から高い評価を受けました。しかし、当時のブラジル経済の悪化により、音楽活動が困難になりつつありました。

ECMとの出会いと世界進出

1974年、ベルリンのジャズ・フェスティバルに参加したことが転機となり、エルメート・パスコアールやナナ・ヴァスコンセロスらと共演。その後、ECMの創設者であるマンフレート・アイヒャーに見出され、1976年にECMのメンバーとなります。当初、ジスモンチはECMについてよく知らなかったため、参加を躊躇しましたが、アイヒャーの熱意に打たれ、参加を決意します。

ECMでは、ブラジルの著名なミュージシャンとのアルバム制作を構想していましたが、当時のブラジル軍事政権による国外への高額課税がネックとなり、ソロ・アルバムの制作に方針を変更。ノルウェーでナナ・ヴァスコンセロスと再会し、共作アルバム『輝く水』（1976年）を制作しました。このアルバムは、20万枚を売り上げ、イギリス、アメリカ、ドイツで様々なジャンルの賞を受賞。ジスモンチは一躍、世界的な音楽家としての地位を確立しました。また、このアルバムを機に、ヴァスコンセロスも世界的なパーカッション奏者として活躍するようになります。

その後、ジスモンチはアマゾンのフォークローレ研究に没頭し、2年間現地で生活を共にします。1978年には、ヤン・ガルバレク、コリン・ウォルコット、ラルフ・タウナーらとアルバム『輝く陽』を、1980年にはヤン・ガルバレク、チャーリー・ヘイデンとアルバム『マジコ』をリリース。1979年にはソロ・アルバム『ソロ』がアメリカで10万枚以上を売り上げるヒットを記録しました。

レーベルオーナーとしての活動

ジスモンチは、自身のレーベル「Carmo」のオーナーでもあります。CarmoはECMとジョイントベンチャーを行い、CarmoのタイトルをECMを通じてブラジル国外で販売しています。また、EMI/Odeonが持つ、自身の全タイトルのブラジル以外の地域の販売権を買い取ることに成功しています。

音楽家としての功績

エグベルト・ジスモンチは、その高い演奏技術と、ジャンルを超越した音楽性で、世界中の音楽ファンを魅了し続けています。特に、ECMでの作品群は、彼の代表作として知られ、多くのミュージシャンに影響を与えています。彼の音楽は、ブラジルの文化や自然を反映したものであり、聴く人の心に深く響きます。

2007年には15年ぶりに来日を果たし、日本のファンを熱狂させました。

カバーしているアーティスト

エリス・レジーナ
ジョン・マクラフリン
セルジオ・アサド
パコ・デ・ルシア
ヨーヨー・マ
他

ジスモンチの音楽は、これからも多くの人々に愛され、語り継がれていくことでしょう。

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