エシュロン

エシュロン (ECHELON) について

エシュロンは、主にアメリカ合衆国によって運営される通信傍受システムで、軍事目的を含む幅広い通信を監視しています。その基盤を支えるのはアメリカの国家安全保障局 (NSA) であり、ヨーロッパ連合や他の国々からも指摘されています。特に、エドワード・スノーデンの告発を通じて、エシュロンが有線データ通信でさえ秘密裏に盗聴を行っている事実が明らかになりました。しかし、アメリカ政府はこれを公に認めていません。

エシュロンの誕生

エシュロンは、1943年5月17日に締結された「英米通信傍受協定」、通称ブルサ協定と同時に始まりました。この協定により、アメリカとイギリスの間で通信傍受の連携が確立され、その後の1948年にはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わり、UKUSA協定が成立しました。この時期にエシュロン・システムとしての運用が始まり、1952年にはNSAが設立され、通信傍受の枠組みがより強化されていきました。

暴露と公表

エシュロンの存在が広く知れ渡るきっかけとなったのは、1972年に元NSA職員のペリー・フェルウォックが大規模な通信傍受活動の実態を暴露したことです。その時期は、アメリカ国内でのウォーターゲート事件などで政府による監視活動が問題視されていたため、フェルウォックの告発は大きな波紋を呼びました。そして1988年にダンカン・キャンベルが「エシュロン」という名称を公表したことが、システムの名を広める一因となりました。

2012年になると、スノーデンによるPRISMプログラムの暴露があり、通信傍受手法の具体的な内容が明るみに出ることとなりました。

欧州議会の報告

2001年7月、欧州議会は「エシュロン通信傍受システムに関する特別委員会」の最終報告書を発表しました。この報告書では、UKUSAによるグローバルな傍受システムの存在を確認し、軍事目的だけでなく、私的および商業通信の傍受も行われていることが明らかにされました。しかし、全ての通信を完全に傍受することは技術的に不可能であるとも指摘されています。

日本におけるエシュロン

実は日本にもエシュロンの一部として青森県にある三沢飛行場に傍受施設が存在しています。朝日新聞は2001年にこのアジア・オセアニア地域での傍受基地の存在について報道しました。

現代の通信傍受

今日では、通信の大部分が光ファイバーを用いた有線通信によって行われており、傍受が難しくなっています。20世紀末までの技術では、海底ケーブルに傍受装置を取り付けることで傍受が可能でしたが、1997年からは光学技術の進展によりその方法が困難になりました。それでも、PRISMによるインターネット監視といった新たな手法により、通信傍受は依然として行われていることが確認されています。

さらに、システムの稼働には多大なコストがかかり、2000年1月にはエシュロン・システムが72時間ダウンする事件が発生し、修復に150万ドルの費用がかかっています。また、2013年にはドイツのメルケル首相の携帯電話が盗聴される事件が確認され、2020年にはスイス企業を利用した長期的な盗聴活動が報じられました。

エシュロンを題材にした作品

エシュロンは、さまざまなメディア作品でも取り上げられています。例えば、漫画『ゴルゴ13』の「神の耳・エシュロン」や、『STEINS;GATE』ではハッキングの重要シーンとして描かれています。また、映画『エネミー・オブ・アメリカ』やドキュメンタリー番組『NSA 国家安全保障局の内幕』などでもその存在が紹介されています。これらの作品は、システムの影響力や社会への影響を伝えています。

エシュロンは、通信傍受の世界的なネットワークとして、現代社会におけるプライバシーとセキュリティの重要な問題を提起しています。

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