エジプトのヨセフ (絵画)

ヤコポ・ダ・ポントルモ作『エジプトのヨセフ』について

イタリア・マニエリスム期の画家、ヤコポ・ダ・ポントルモが1518年頃に制作した油彩画『エジプトのヨセフ』は、旧約聖書の「創世記」に登場するヨセフの物語を題材としています。この作品は、サルヴィ・ボルゲリーニが息子の結婚を機に依頼したもので、当初はフィレンツェのボルゲリーニ宮殿の「結婚の間」を飾るために描かれました。現在はロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

作品の背景と主題

この絵画は、ポントルモ自身による他の3枚のヨセフを題材とした絵画（『助けを乞うヨセフの兄弟たち』、『ポティパルに売られるヨセフ』、『ファラオと執事、パン屋』）と共に、寝室装飾の一部として制作されました。当時、ヨセフの物語を家具の装飾に用いるのは流行であり、また、銀行家であったフランチェスコ・ボルゲリーニにとっては、異国で成功したヨセフの姿は適切な手本であったと考えられます。

この絵画は、ポントルモが描いた他の3枚の板絵よりも大きく、追加注文として最後に制作された可能性があります。

絵画の構成

『エジプトのヨセフ』では、ヨセフは金茶色の服、薄紫色のマント、緋色の帽子を身に着けた姿で、画面内に4回登場します。

右前景: ヨセフはエジプトの統治者としてファラオの「第二の車」に腰かけ、飢饉の犠牲者たちの嘆願に耳を傾けています。彼の威厳と公正さが表れています。
画面左側: ヨセフは老父ヤコブをファラオに紹介しています。ここでは家族との絆が強調されています。また、聖書には記述がないものの、ヨセフの母ラケルも描かれています。この追加は、絵画に物語性を持たせるための演出と考えられます。
中景中央右寄り: 階段のところで、ヨセフは息子の1人と共に再び登場します。もう1人の息子は階段を上った先で女性に迎えられており、家族の繁栄を示唆しています。
画面上部右側: 円形の寝室では、ヨセフは臨終を迎えるヤコブに息子たちを祝福させようとしています。家族の絆と信仰が描かれています。

画家ジョルジョ・ヴァザーリの記述

マニエリスム期の画家であり伝記作家でもあるジョルジョ・ヴァザーリは、『画家・彫刻家・建築家列伝』の中で、この絵画について詳細に記述しています。ヴァザーリによれば、前景中央右寄りの階段に腰かけている少年は、ポントルモの弟子であったアーニョロ・ブロンズィーノであるとされています。彼はこの少年を「たいそう生き生きとして美しく、驚嘆すべき人物表現だ」と絶賛しています。また、この絵画はサイズは小さいながらも、その「優美さ、完璧さ、卓越さ」において、他に並ぶものがないと評価しています。

まとめ

『エジプトのヨセフ』は、ポントルモの卓越した画力と、ヨセフの生涯を多角的に描いた物語性が融合した傑作です。この作品は、当時の流行や依頼主の状況を反映しつつ、聖書の物語を芸術的に表現した重要な作品として、今日まで高く評価されています。

ギャラリー

ポントルモによるヨセフの物語の絵画 (すべてロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵)

助けを乞うヨセフの兄弟たち
ポティパルに売られるヨセフ
* ファラオと執事、パン屋

外部リンク

ナショナル・ギャラリー (ロンドン) 公式サイト、ポントルモ『エジプトのヨセフ』 (英語)

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