エスタンピー

エスタンピー（Estampie）

エスタンピーは、中世ヨーロッパにおいて隆盛した舞踊と、それに関連する楽曲形式の両方を指す言葉です。多様な別名（estampida, istampitta, istanpitta, stampita）を持ちます。

楽式としてのエスタンピー

エスタンピーは、13世紀から14世紀にかけて重要な器楽曲の形式として発展しました。その特徴は、4つから7つの「プンクタ（プンクトゥム）」と呼ばれる部分で構成され、各プンクタが反復される点にあります。

典型的な構造は以下の通りです。


aa, bb, cc...


各プンクタは、通常、異なる終わり方（ouvert＝開とclos＝閉）を持ち、変化に富んだ音楽展開を生み出します。


a+x, a+y; b+w, b+z...


ただし、すべてのプンクタに同じ終わり方が用いられることもあります。


a+x, a+y; b+x, b+y, c+x, c+y...


エスタンピーと類似した構造は、同じく中世ヨーロッパの舞踊であるサルタレロにも見られます。

楽式としてのエスタンピーの最も初期の例は、トルバドゥール、ランバウト・デ・ヴァケイラスの歌『Kalenda Maya』であると考えられています。この旋律は、フランスのジョングルールによって演奏されました。現存する他のエスタンピーは、すべて器楽曲です。14世紀の作品には、『Lamento di Tristano, La Manfredina, Salterello, Isabella, Tre fontane』といった副題を持つものがあります。

エスタンピーは通常モノフォニー（単旋律）ですが、2声で書かれた作品も存在します。

舞踏技法としてのエスタンピー

楽曲形式としてのエスタンピーが持つ舞踊的な性格は、エスタンピーが元来舞踊であったことを示唆しています。ダンスとしてのエスタンピーに関する詳細な記述は現存していませんが、当時の装飾写本や絵画から、活発な跳躍を伴う舞踊であったことが推測できます。

『Tre fontane（3つの泉）』や単に『エスタンピー』と呼ばれる楽曲の中には、高度な技巧を要するものが含まれています。これは、エスタンピーが単なる舞踊のための音楽ではなく、抽象的な演奏音楽としても発展した可能性を示唆しています。

語源

「estampie」の語源には諸説あります。ダンスの別名である「stantipes」は、踊りの中で片足が動かないことを意味するとも解釈できます。しかし、より有力な説は、「estamper」（足を踏み鳴らす）という言葉との関連性を示すものです。

参考文献

P. Aubry: "Estampies et danses royales" (1906)- ISBN 2-8266-0603-4
L. Hibberd: "Estampie and Stantipes" (1944) - in: Speculum XIX, 1944, 222 ff.
W. Apel: "Harvard Dictionary of Music" (1970) - Heinemann Educational Books Ltd
Timothy McGee, "Medieval Instrumental Dances".

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