サルタレロ

サルタレッロは、13世紀のナポリで誕生した、陽気で活発なダンスです。現存する音楽から、当時どのような踊りだったかを正確に知ることはできませんが、速い3拍子に合わせて跳躍するステップが特徴で、その名はイタリア語の「saltare（跳ぶ）」に由来します。

歴史

サルタレッロは中世ヨーロッパの宮廷で広く親しまれました。15世紀には、アップビートで軽快な跳躍を伴うステップと、速い3拍子の音楽という要素が確立し、多くの舞踏譜にその例が見られます。当初は即興的なダンスとして発展し、1465年にはアントニオ・コルナッツァーノがサルタレッロに関する最初の理論書を著しました。16世紀には、ダンスの手引書においてサルタレッロのステップは繋ぎの役割を果たす程度でしたが、仮面舞踏会で仮装した人々によって踊られるなど、宮廷文化の中で生き続けました。また、ドイツの quadernaria がサルタレッロの影響を受け、saltarello tedesco（ドイツのサルタレッロ）としてイタリアに逆輸入されるという現象も見られました。

民族舞踊としてのサルタレッロ

サルタレッロは元々ナポリの宮廷舞踊でしたが、イタリアのチョチアリア地方では典型的な民族舞踊として根付いています。ローマのカーニヴァルやモンテ・テスタッチオのワイン収穫祭でも、人気の伝統として踊られています。1831年にローマのカーニヴァルを訪れたドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーンは、サルタレッロに触発され、代表作の一つであるイタリア交響曲の終楽章にその要素を取り入れました。北イタリアにおいては、ロマーニャ地方の saltarello romagnolo が唯一の例として知られています。

中世のサルタレッロ音楽

イタリア中世のサルタレッロの音楽を知る上で重要な資料は、14世紀から15世紀初頭にかけてトスカーナ地方で作成された自筆楽譜（大英図書館Add. 29987）です。この楽譜には、初期のサルタレッロの音楽が4曲収録されており、エスタンピーの音楽と共通する様式が見られます。特に2曲目のサルタレッロは、音楽的に比較的新しい様式を示しています。現代においては、歴史的演奏法を実践するグループだけでなく、ゴシック＝ポップやメタル、ロマンティック＝中世音楽のバンドによっても演奏されており、デッド・カン・ダンスやポーランドのジャズ・ピアニスト、Leszek Możdżerによるものが特に有名です。

サルタレッロは、単なる歴史的なダンス音楽にとどまらず、現代の音楽シーンにも影響を与え続けています。中世の音楽様式を今に伝える貴重な存在として、その魅力は色褪せることがありません。

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