エストニアの歴史

エストニアは、バルト三国のひとつに数えられる国です。その歴史は、先史時代から現代に至るまで、多くの変遷を経てきました。

先史時代からドイツ人進出まで

紀元前9500年頃から、バルト海沿岸地域には人類が居住していたと考えられています。紀元前3000年頃には、フィン・ウゴル語族に属するエストニア人がヴォルガ川中流域から移住してきました。古代において、エストニアを含むバルト地方はギリシャやローマといった文明の中心地から遠く離れており、外部からの影響は限定的でした。

7世紀から8世紀にかけて、ヴァイキングがバルト海に進出し、タリンやタルトゥなどの都市で東西交易が活発に行われました。11世紀には、キエフ大公ヤロスラフ1世がタルトゥに城を築きますが、その支配は長くは続きませんでした。13世紀以前のエストニアは統一されておらず、キヘルコントと呼ばれる共同体ごとに分かれていました。

ドイツ人の進出と支配

12世紀、バルト地方はキリスト教化されていない「異教の地」と見なされ、キリスト教世界の布教活動が始まりました。1199年、教皇インノケンティウス3世はリヴォニア（現在のエストニア南部からラトビアにかけての地域）に十字軍を派遣。1202年には、リヴォニア帯剣騎士団が設立され、武力による改宗が進められました。帯剣騎士団はエストニア北部への進出を試みますが、現地住民の抵抗に遭い、デンマーク国王ヴァルデマー2世の支援を得て、1220年までにエストニア本土を制圧しました。

1219年には、デンマークによってタリンの起源となる城塞が建設されました。1236年、帯剣騎士団はリトアニア人との戦いで壊滅し、ドイツ騎士団に統合され、リヴォニアのドイツ騎士団領は「リヴォニア騎士団領」と呼ばれるようになります。改宗が進むにつれてドイツ人の入植が進み、多くのエストニア人がドイツ人領主の支配下に入りました。

1285年には、タリンがハンザ同盟に加盟し、交易によって繁栄を築きました。しかし、その一方で、土着のエストニア人は悲惨な状況に置かれました。1340年代には、デンマークがエストニア北部から撤退し、リヴォニア騎士団に領地を売却。1343年から1345年にかけてセント・ジョージ夜の反乱が起き、デンマークはリヴォニアをドイツ騎士団に売却しました。

スウェーデン支配時代

16世紀のリヴォニア戦争でリヴォニア騎士団領が崩壊すると、エストニアはスウェーデン、ポーランド、デンマークなどの支配を受けることになります。1595年のタユシナ条約で、スウェーデンがエストニア北部の支配権を獲得。17世紀には、グスタフ2世アドルフがリヴォニア北西部を獲得し、エストニア全土がスウェーデンの支配下に入りました。

スウェーデン統治下のリヴォニアは、エストラント（エストニア北部）とリーフラント（エストニア南部とラトビア北部）に区分されました。スウェーデン時代には、タルトゥ大学の前身であるアカデミア・グスタヴィアナが設立され、聖書のエストニア語訳が行われるなど、学術分野が発展し、「良きスウェーデン時代」として記憶されています。

ロシア帝国の統治と民族意識の高まり

18世紀初頭の大北方戦争で、エストニアはロシア帝国の支配下に入りました。ロシア帝国は、バルト・ドイツ貴族を優遇する政策をとり、エストニア人とドイツ人の格差が拡大しました。しかし、19世紀に入ると、啓蒙思想が広まり、農奴解放や教育水準の向上などによって、エストニア人の民族意識が高まりました。

1860年代には、エストニア語の教育施設が開校され、エストニア音楽祭が開催されるなど、民族文化運動が活発化しました。カール・ロバート・ヤコプソンやリディア・コイトゥラといった文化人が民族意識の高揚に貢献しました。

独立、ソ連占領、そして独立回復

1917年のロシア革命後、1918年 2月24日にエストニアは独立を宣言します。しかし、独立後も政情は不安定で、権威主義的な独裁体制が敷かれることもありました。1940年、ソ連はエストニアを占領し、併合。多くのエストニア人が逮捕、追放されました。

第二次世界大戦後、エストニアはソ連の共和国として再編入され、集団農場化政策が進められました。1980年代後半、ソ連のペレストロイカ政策の影響を受け、エストニアでも独立運動が活発化。1991年8月20日、エストニアはソ連からの独立を回復し、国際社会に復帰しました。

独立回復後

独立回復後、エストニアは西欧諸国との関係を強化し、2004年には北大西洋条約機構（NATO）と欧州連合（EU）に加盟しました。IT技術の導入にも積極的で、電子政府の先進国として知られています。

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