エストニア国立博物館

エストニア国立博物館は、エストニアのタルトゥに位置する博物館で、特に民俗学者ヤコプ・フルトの尽力により、エストニアの民俗誌やフォークアートの遺産を展示することに特化しています。その歴史は19世紀後半に収集された展示物に遡ります。

博物館では、エストニア人の歴史や伝統だけでなく、フィン・ウゴル系民族やエストニアの少数民族の歴史・文化に関する様々な物や事柄が展示されています。エストニア各地から集められた民族衣装のコレクションや、手織りのカーペット、テーブルクロスなどは、エストニアの豊かな文化を物語る貴重な展示物です。

歴史

博物館は1922年、ラーディ・マナー（ラーディ・ムイス）に開館しました。当時の館長は、1919年からタルトゥ大学に勤務していたイルマリ・マンニネンでした。ラーディ・マナーは、かつてバルト・ドイツ人の収集家が集まる場所であり、彼らが1860年頃に移住した後も、1920年までコレクションが土地に残されていました。

しかし、1940年にはこの土地にラーディ飛行場が建設され、博物館の建物は第二次世界大戦中のタルトゥ攻勢によって破壊されてしまいました。その後、飛行場は50年もの間ソビエト連邦の爆撃基地となり、その間、博物館の展示物はタルトゥ市内の教会など、様々な場所に保管されることとなりました。この飛行場は極秘施設となり、外国人は市内への立ち入りを禁じられていました。

2005年、エストニア文化省とエストニア建築家連盟は共同で、博物館の新築に関して国際的な建築コンペを開催することを発表しました。その結果、フランス・パリを拠点とするイタリア人のダン・ドレル、レバノン人のリナ・ゴットメ、そして日本人の田根剛によるグループが最優秀賞を獲得しました。

そして、2016年10月、新たな博物館が竣工しました。この1階建ての建物は、旧飛行場の滑走路の傾斜を徐々に上げ、建物の屋根へと繋げていくという、土地の歴史を融合させたデザインとなっています。このデザインは、博物館が置かれた場所の過去を尊重し、未来へと繋ぐというメッセージを伝えています。

2021年8月には、当時の館長であったアラル・カリスがエストニアの大統領に選出されました。これは、博物館の重要性と、エストニア社会における文化的な役割を象徴する出来事と言えるでしょう。

エストニア国立博物館は、エストニアの歴史と文化を深く理解するための重要な場所であり、国内外からの訪問者にとって、貴重な学びと感動の体験を提供しています。

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