エスワティニの王母

エスワティニの王母

エスワティニにおける「王母」とは、先代の王妃、すなわち国王の母に与えられる称号です。これは、日本の皇太后や他国の同様の地位に相当します。国王が行政上の国家元首であるのに対し、王母は精神的な国家元首としての役割を果たすとされています。

概要

かつて、王母は強大な権限を持っていましたが、時代とともにその権限は縮小され、現在は象徴的な国事行為に携わる程度となっています。例えば、伝統的なリード・ダンスの主催や、雨乞いの儀式の執行などがその例です。

王母はドラミニ家（エスワティニ王家）の最長老でもあり、国王が幼少であったり、病弱であったりする場合には、摂政として国王の職務を代行します。過去には、摂政時代の王母が国王を凌ぐほどの影響力を持った例も少なくありません。ただし、王母はドラミニ家出身ではないため、女王として即位することはありません。

摂政として有名な例としては、ソブーザ2世の祖母であるラボツィべニ・ムドゥルイや、ムスワティ3世の母であるヌトンビなどが挙げられます。しかし、ソブーザ2世の死後、ドラミニ家の有力者であったムファナシビリ王子の影響により、王母の地位は衰退していきました。

歴代王母一覧

ラヤカ・ンドワンドウェ（在位：1745年 - 1780年、摂政：1780年）
ロンヴラ・ムンゼベレ（在位：1780年 - 1815年、摂政：1815年）
ロジバ・シメラネ（在位：1815年 - 1840年、摂政：1836年 - 1840年）
ツァンジレ・ンドワンドウェ（在位：1840年 - 1875年）
シシレ・クマロ（在位：1875年）
ティバティ・ンカンブル（在位：1875年 - 1894年、摂政：1889年 - 1894年）
ラボツィべニ・ムドゥルイ（在位：1894年 - 1925年、摂政：1899年 - 1921年）
ロマワ・ンドワンドチェ（在位：1925年 - 1938年）
ヌクワセ・ンドワンドチェ（在位：1938年 - 1957年）
ジフラティ・ンドワンドチェ（在位：1957年 - 1975年）
セネレレニ・ンドワンドチェ（在位：1975年 - 1980年）
ゼリーウェ・ショングウェ（在位：1982年 - 1983年、摂政：1982年 - 1983年）
* ヌトンビ（在位：1983年 - 現在、摂政：1983年 - 1986年）

エスワティニの王母は、歴史の中で様々な役割を果たしてきました。その変遷を知ることは、エスワティニの政治と社会を理解する上で重要な要素となります。

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