エゾツルキンバイ

エゾツルキンバイ（蝦夷蔓金梅）

エゾツルキンバイは、バラ科エゾツルキンバイ属に分類される多年草です。学名は Argentina anserina といいます。以前はキジムシロ属に分類されていましたが、近年の研究により独立した属となりました。別名としてエゾノツルキンバイとも呼ばれます。

特徴

エゾツルキンバイは、地中に根茎を持ち、そこから細長い走出枝を伸ばして広がります。走出枝の節からは根を出し、新たなロゼットを形成します。根から出る葉は奇数羽状複葉で、長さは20〜40cmに達します。小葉は13〜19個あり、しばしば小葉の間の葉軸に小さな付属小葉片が見られます。側小葉は基部にいくにつれて小さくなり、先端の小葉と上部の側小葉はほぼ同じ長さです。小葉の形は卵形から狭楕円状長楕円形で、長さ2〜5cm、幅7〜20mmです。先端は鈍く、縁には粗い鋸歯があります。基部はくさび形で、葉柄はほとんどありません。葉の表面は無毛で光沢がありますが、若い葉には長い毛が生えることもあります。裏面は白綿毛が密生し、葉脈の主脈には長い毛が生えています。葉柄は長さ4〜6cmで毛が生えています。根出葉の基部には托葉があり、卵形から披針形の耳型で、乾いた膜質で合着しています。

花期は6〜7月で、黄色い花を咲かせます。花は走出枝に単生し、直径2〜3cm程度です。花柄は長さ10〜20cmで、まばらに毛が生えています。萼片は5個あり、三角状卵形で先端は鋭く、長さ5〜7mmで外側に毛が密生しています。副萼片も5個あり、広披針形で萼片より少し短いです。花弁は5個で、広倒卵形で先端は丸く、縁は全縁で、基部は爪状で長さ7〜12mmです。雄蕊は20個あり、葯は卵形から楕円形です。雌蕊は多数あり、花柱は長さ約2mmで子房に側生します。果実は痩果で、多数がまとまってつき、表面は平滑です。

分布と生育環境

日本国内では、北海道、本州の東北地方、新潟県、石川県などの海岸の塩性砂地に自生しています。世界的には、北半球の温帯地域から高緯度地域、さらには南アメリカやオーストラリアまで広く分布しています。ヒマラヤでは、高山帯の乾燥した砂地や川岸などに生育しています。

名前について

和名のエゾツルキンバイは、「蝦夷（北海道）に生える蔓性の金梅」という意味で、同じキジムシロ属のツルキンバイに似ていることから名付けられました。種小名の anserina は、「ガンの生息地に生える」という意味を持ちます。

分類

エゾツルキンバイは、以前はキジムシロ属に含まれていましたが、近年の分子系統学的研究により、キジムシロ属が広義であることが判明しました。その結果、エゾツルキンバイ属として独立し、学名が Argentina anserina (L.) Rydb. に変更されました。しかし、The Plant Listでは、A. anserina (L.) Rydb. は、キジムシロ属の Potentilla anserina L. のシノニムとして扱われています。

利用

チベットなどでは、走出枝の先端にできる肥大した根の部分を食用とします。この部分にはデンプンが蓄えられており、粥に混ぜて食べられています。また、秋には太い根を掘り出し、ヨーロッパ原産のパースニップのように根菜として扱い、スープの具材として利用し、その風味を楽しみます。

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