エゾノリュウキンカ

エゾノリュウキンカ（蝦夷立金花）

エゾノリュウキンカ（学名: Caltha fistulosa）は、キンポウゲ科に属する多年生の草本植物です。近縁種であるリュウキンカよりも大型で、別名エゾリュウキンカとも呼ばれます。湿地や水辺に生息し、特に谷地で見られることが多いため、その丸い葉がフキに似ていることから、俗に「ヤチブキ」と呼ばれることもあります。

分布と生育環境

エゾノリュウキンカは、本州北部（主に東北地方以北）、北海道、樺太、千島列島、朝鮮半島北部、そしてウスリーといった寒冷地に分布しています。これらの地域では、湿地、水の流れる谷間、小川の縁などの水辺に自生しています。特に北海道では、外来種のオランダガラシと生育地が重なることも珍しくありません。

形態と生態

多年生草本であるエゾノリュウキンカは、長い葉柄を持つ根生葉と、花茎につく葉を持っています。葉身は基部がくびれた腎臓形で、幅は約20cmにもなり、縁には鋸歯が見られます。花期は初夏で、花茎は約80cmまで伸び、その先に鮮やかな黄金色の花を咲かせます。

食用としての利用

エゾノリュウキンカは、葉、茎、花が食用とされ、特に北海道では初夏の山菜として広く親しまれています。採取時期は、東北地方では5月から6月、北海道では6月が最適とされています。水が流れる場所に生えているものを選ぶと良いとされ、開花前の若い株の茎葉が特に美味しいとされています。アクは少ないものの、独特の苦味があるため、よく茹でて水にさらしてから調理します。おひたし、ごま和え、からし和え、酢味噌和えなど、様々な和え物として楽しむことができます。また、天ぷらや炒め物、味噌汁の具としても利用されます。アイヌ語では「ウフトウリ」と呼ばれ、伝統料理のラタシケプの材料にも使われてきました。茹でて水にさらしてもわずかに残る苦味が、エゾノリュウキンカの独特な持ち味です。近縁種であるエンコウソウも食用になります。

注意点

キンポウゲ科の植物には有毒な種が多い中、リュウキンカはその中で数少ない食用となる植物です。特に北海道に群生するエゾノリュウキンカがよく食用にされますが、成長した株は下痢などの症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。採取する際は、必ず若い株を選ぶようにしましょう。

参考資料

* 高橋秀男監修、田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社、2003年4月1日、158-159頁。ISBN 4-05-401881-5。

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