エゾハリスゲ

エゾハリスゲ（Carex uda）

エゾハリスゲは、スゲ属に属する大柄な多年生草本植物であり、その特徴的な果胞の形状が目を引きます。この植物は主に湿った環境で成育し、湿地や流水の近くでよく見られます。

特徴

全体が柔らかく、細長い姿を持つエゾハリスゲは、根茎が短く、葉や茎を束状に形成します。匍匐枝は長く伸びることはなく、主に花茎はまっすぐ上に伸び、高さが20-50 cmに達します。葉は花茎より短く、幅は2-3 mmで、基部の鞘は淡褐色を呈します。

花期は4月から7月にかけてであり、花茎は細長く柔らかく、断面が三角形で鋭い稜線を持っていますが、その表面はほとんどざらざらしていません。小穂は茎の先端に1つだけつき、長さは0.7-1 cm、幅は5-6 mmです。その構造は雄雌性を持ち、最上部に雄花が、下部に雌花が並びます。雄花の鱗片は栗色から濃褐色で尖った形をしており、雌花の鱗片は先端が鋭く尖ったものと、鈍く尖ったものがあり、いずれも褐色をしていますが、早期に脱落します。

果胞は長卵形で、長さは3.5-4 mm、幅は1.5 mmで無毛です。果胞の表面には細かな脈が多数あり、嘴は長く、先端は切り取られたような形状をしているか、ややくぼみます。果胞は熟すと独特な反り返りを示し、これは本種の大きな特徴の一つです。

また、この植物の果実は楕円形または卵形で、長さは約2 mmであり、果胞に密着して包まれています。柱頭は2つに分かれており、これも特有の特徴です。別名としてオオハリスゲが存在します。

分布と生育環境

エゾハリスゲは主に日本の本州中部および北部、そして北海道に分布しています。国外では朝鮮や中国東北部からサハリン、アムール、ウスリーにかけて見られます。標本調査によると、北海道のほぼ全域で確認されていますが、本州では中部から関東の内陸部に限られています。この植物は湿った場所を好み、特に湿地や河川の水辺に生育します。

近縁種

エゾハリスゲの近縁種として、小穂が単一で雄雌性を持つものがあります。その中で本種の特徴である果胞が円形で無毛であり、果胞が立ち上がる性質を持つものがハリスゲ節の中でも多くはありません。この節には約10種が知られており、本種はその中で特に背丈が高いことや果胞の反り返りで際立っています。花茎の断面が三稜形で鋭い稜を持ち、小穂の下部分はざらざらしていないこと、果実が果胞に包まれていることが、本種を他の種と正確に区別するためのポイントです。

牧野原著（2017）によれば、類似の種であるヒカゲハリスゲ（C. onoei）との差異は、花茎の上部にざらつきを持つ点にあります。また、ユキグニハリスゲ（C. semihyalofructa）は2005年に定義された種で、それ以前は本種やヒカゲハリスゲと混同されることが多かったとされています。実際に本種の図版が他の類似種として用いられた例も存在します。

参考文献

• - 星野卓二他、『日本カヤツリグサ科植物図譜』（平凡社、2011）
• - 勝山輝男、『日本のスゲ 増補改訂版』（文一総合出版、2015）
• - 牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』（北隆館、2017）
• - すげの会、「日本産スゲ属分布図集」（2018、すげの会）

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