エゾライチョウ

エゾライチョウについて

エゾライチョウ（学名：Tetrastes bonasia）は、キジ科に属する鳥類で、特に北海道に広く分布しています。北海道ではヤマドリという言葉がこの鳥に使われることが一般的で、特に狭義の意味で彼らを指すことが多いですが、本州中部の高山帯に住むライチョウ（Lagopus mutus）とは異なる属に位置づけられています。エゾライチョウの羽は季節によって色が変わるわけではなく、そのために英語ではこの種をGrouseと呼ぶことで他の羽色が変わる種（Ptarmigan）と区別しています。

分布

エゾライチョウは、スカンジナビア半島から朝鮮半島にかけて、ユーラシア大陸の北部に広範に分布しています。特にミトコンドリアDNA分析によると、大陸に生息する系統と北海道の系統は約4万年前に分化したとされています。日本国内では北海道にのみ生息し、他の環境に適した亜種が存在しています。エゾライチョウは、その特性から4～11の亜種に分類されていますが、詳細な分類については諸説があります。

同じTetrastes属には、ミヤマエゾライチョウ（Bonasa sewerzowi）やエリマキライチョウ（Bonasa umbellus）が存在し、特にミヤマエゾライチョウは比較的高標高地の森林に多く見られます。これらの系統間においても、その遺伝的多様性は維持されており、健康な状態で生存し続けていると考えられています。

形態

エゾライチョウはその体重において雄と雌の差がほとんどなく、通常350～400gほどの重さです。翼長は約17cmで、体全体は黄土色や茶色、白色といった色合いのまだら模様を持っています。また、足には白い羽毛があり、くちばしは黒色です。オスはのどに黒色部があり、その周りを白線が囲っていますが、雌にはその部分がないため、視覚的にオスと雌を見分けることができます。

生態

北海道のエゾライチョウは主に標高200〜800メートルにある亜高山帯の針葉樹林と落葉広葉樹林に生息していますが、カラマツの人工林は好みではありません。成鳥は主に植物食であり、樹木の芽や葉、果実、種子などを食べていますが、幼鳥は昆虫などの動物性食物も多く摂取します。エゾライチョウは留鳥であり、季節的な移動を行うことはありませんが、大陸の亜種は通常10羽以上の群れを作ります。対照的に、北海道の亜種は10羽に満たない小さな群れで生活することが一般的です。

繁殖期は5月に訪れ、オスは約3月末から縄張りを形成し、メスとつがいを作ります。巣は地上に作られ、通常7個程度の卵をメスが抱卵します。孵化までおよそ23日要し、孵化後は巣立ちます。雛はメスによって守られながら成長し、オスは繁殖が終わるとつがいを解消します。秋までに幼鳥はメスと共に「家族群れ」として過ごし、非積雪期は樹上で、積雪期は雪中に浅い穴を作り、ねぐらとします。

狩猟鳥および保全状態

エゾライチョウはかつては一般的な野鳥でしたが、現在では狩猟や自然環境の変化により、その生息数が大幅に減少しています。狩猟としての美味しさは認知されていますが、今なお狩猟鳥としての指定が解除されることに抵抗を示す声もあります。特に1920年代から1950年代までに年間5～6万羽が捕獲されていた過去がありますが、最近ではキツネによる捕食が個体数の減少の一因であるとされています。現在、エゾライチョウは「情報不足（DD）」とされ、希少種として保全が求められています。

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