エチオピア航空409便墜落事故

エチオピア航空409便墜落事故：未解明の謎が残る悲劇

2010年1月25日、エチオピア航空409便がレバノン・ベイルート発アディスアベバ行きの途上、地中海上に墜落するという痛ましい事故が発生しました。乗員乗客90名全員が犠牲となったこの事故は、1996年のエチオピア航空961便ハイジャック墜落事件以来、同社にとって最悪の事態となりました。

事故機の概要

事故機はボーイング737-8AS型で、機体記号はET-ANB、製造番号は29935でした。2002年1月18日に初飛行し、ライアンエアーを経て、2009年9月12日にエチオピア航空にリースされた、事故当時8年7日の機齢でした。事故前の2009年12月25日には整備点検が行われ、技術的な問題は確認されていませんでした。

事故当日と捜索活動

悪天候の中、409便はベイルートのラフィク・ハリリ国際空港を離陸。離陸から4～5分後、高度約2,700メートルでレーダーから消えました。沿岸部の目撃情報によると、炎上しながら海に墜落したとされています。

事故後、レバノン当局を中心に、レバノン軍、海軍、国連平和維持軍（UNIFIL）、そしてアメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、トルコなど、多くの国の軍や機関が捜索活動に参加しました。捜索にはヘリコプター、艦艇、潜水艦、哨戒機などが投入され、犠牲者の遺体回収、フライトデータレコーダー（FDR）、コクピットボイスレコーダー（CVR）の発見に全力を尽くしました。発見された遺体はDNA鑑定のためにベイルートの病院に送られ、2月23日までにすべての遺体の身元特定が完了しました。

事故原因究明と議論

レバノン民間航空局が主導し、アメリカ国家運輸安全委員会（NTSB）、フランス航空事故調査局（BEA）、ボーイングも協力して事故調査が行われました。レバノン大統領はテロの可能性を否定しましたが、事故原因をめぐっては様々な憶測が飛び交いました。

2012年1月17日、レバノン民間航空局は最終報告書を公表し、事故原因はパイロットエラーだと結論付けました。報告書では、パイロットの速度、高度、針路の誤り、クルー・リソース・マネジメント（CRM）の原則を逸脱した操縦操作などが原因として指摘されました。

しかし、エチオピア航空はこの報告書に反論。調査過程と報告内容に偏りがあると主張し、機上で爆発があった可能性を強く示唆しました。「火の玉が海に墜ちた」という目撃証言やCCTV映像の存在、乗客や荷物に関する調査の不備などを根拠としています。

さらに、ウィキリークスに公開された情報によると、ヒズボラの幹部が409便に搭乗予定だったとの情報や、ヒズボラがイスラエルの工作による破壊工作だと確信しているという内容も含まれていました。しかし、残骸からは炎上した痕跡が見つかっていないことから、目撃された爆発は落雷と誤認された可能性も指摘されています。

結論

エチオピア航空409便墜落事故は、パイロットエラーが原因とするレバノンの公式見解と、エチオピア航空が主張する爆発の可能性という、相反する結論が提示されたまま現在に至っています。悪天候という外的要因と、パイロットのミス、そして様々な陰謀論や憶測が絡み合った、複雑で未解明な部分を残す航空事故として、記憶されています。この事故は、航空安全に関する議論を深め、事故調査における国際協力の重要性を改めて浮き彫りにしました。また、多角的な視点からの検証の必要性、そして情報公開の重要性を痛感させる事件となりました。

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