エチレングリコール中毒

エチレングリコール中毒について

エチレングリコール中毒は、無色無臭で甘味のある液体エチレングリコールを摂取することによって引き起こされる中毒症状です。主に自動車の不凍液として使用されるこの物質は、偶然の誤飲や自殺などの目的で摂取されることがあります。エチレングリコールは体内で分解され、グリコール酸やシュウ酸などの有害物質を生成し、中毒を引き起こす原因となります。

初期症状と進行

中毒の初期症状には、薬物中毒のような兆候や、嘔吐、腹痛が含まれます。進行するにつれて、意識レベルの低下、頭痛、さらには発作が見られることがあります。これらの症状が進行すると、長期的には腎不全や脳損傷を引き起こす可能性が高まります。たとえ少量の摂取であっても、場合によっては致命的な事態に至ることがあり、その毒性は無視できません。

診断と治療

エチレングリコール中毒が疑われる場合、医療機関では尿中にシュウ酸カルシウムの結晶が確認されることがあります。また、アシドーシスやオスモラリティー・ギャップの増加が見られることもあります。中毒の確定診断には、血液中のエチレングリコールの濃度測定が必要ですが、多くの病院ではこの検査が行えないケースがあることに注意が必要です。

治療には早期の介入が重要であり、まずは患者を安定化させた後、解毒剤を投与します。最優先される解毒剤はホメピゾールですが、入手が難しい場合はエタノールが代替として使用されます。さらに、器官に損傷が見られる場合や重度のアシドーシスの際には血液透析が行われることがあります。その他にも、炭酸水素ナトリウム、チアミン、マグネシウムなどが併用される場合があります。

実際の発生状況

アメリカでは、年間に5000件以上のエチレングリコール中毒の報告があり、その中毒者の多くは成人、特に男性です。エチレングリコールによる死亡事例は1930年代から存在し、特に1937年に発生したジエチレングリコールによる中毒死事故が、その後の食品・医薬品に関する法整備の契機となりました。その後、アメリカでは新薬の販売に際して安全性の確認が義務付けられるようになりました。

近年では、2023年にエチレングリコールやジエチレングリコールに汚染された咳止めシロップが問題となり、インドおよびインドネシアで300人以上の死者を出す事態が発生しました。このことを受け、アメリカ食品[[医薬品局]]は多くの製品に対する検査を行い、少なくとも28社が処分される結果となりました。さらに、2024年には日本での事件もあり、ある夫婦がエチレングリコールを用いて自らの子どもを殺害したとして逮捕される事案が報告されています。

予防策

不凍液には、誤飲防止のために苦味剤が加えられることがありますが、その効果は必ずしも十分ではなく、子供や動物に対してのリスクが残ります。このため、取り扱い時の注意が必要であり、特に家庭内では安全対策が重要です。

もう一度検索