エッジワース・カイパーベルト天体

エッジワース・カイパーベルト天体（EKBO）とは

エッジワース・カイパーベルト天体（EKBO）は、太陽系の海王星軌道以遠に存在する天体群の総称です。一般的に「カイパーベルト天体」とも呼ばれます。これらの天体は、太陽系外縁部に位置し、その多くは氷や岩石で構成されています。

日本学術会議は、EKBOを「TNO（海王星以遠天体）」の別名として扱っていますが、TNOはより広範な概念であり、カイパーベルト外の天体も含むことに注意が必要です。

EKBOの概要

狭義には、軌道長半径が約30auから約48auの範囲に存在する天体を指します。これは、仮説上のオールトの雲よりも内側に位置します。EKBOには、小[[惑星]]帯最大のケレスを超えるサイズを持つ天体も存在し、その総質量は小[[惑星]]帯の数百倍にもなると推定されています。

代表的なEKBOには、冥王星とその衛星カロン、クワオアーなどがあります。また、軌道長半径が約48au以上で離心率の大きい散乱円盤天体（SDO）もEKBOに含められることがあります。SDOの例としては、エリスが挙げられます。ただし、セドナのように、近日点でもカイパーベルトよりはるかに外側に位置する天体は、EKBOには含まれません。

EKBOに起源を持つと考えられる天体には、ケンタウルス族のキロンや、短周期彗星、海王星の衛星トリトン、土星の衛星フェーベなどがあります。これらの天体は、かつてEKBOの一部だったと考えられています。

EKBOの中で最も大きい天体は、冥王星とエリスです。どちらが大きいかは正確には分かっていませんが、これまでに発見された最小のEKBOは、宮古島で発見された半径約1kmの天体です。このような小さな天体は、直接観測が難しいため、掩蔽という現象を観測することで発見されました。

EKBOの分類

EKBOは、軌道の特性によっていくつかの種類に分類できます。

散乱円盤天体（SDO）

SDOは、軌道長半径が約48auから約400auと大きく、離心率が大きい天体です。近日点は約30auから40auの間ですが、遠日点は数百auにもなります。これらの天体は、海王星の重力によってカイパーベルトから散乱されたと考えられています。SDOには、エリスのような大型天体も含まれますが、セドナはEKBOに分類されません。また、ケンタウルス族は、SDOとまとめて扱われることがあります。

狭義のEKBO

狭義のEKBOは、SDO以外の天体であり、さらに以下の2つに分類されます。

共鳴天体

共鳴天体は、海王星との軌道共鳴によって公転周期が整数比になっている天体です。共鳴によって、軌道の離心率や傾斜角が大きくなっています。共鳴天体の中でも、特に有名なのは以下の2種類です。

冥王星族（プルーティノ）: 海王星との3:2共鳴を持つ天体群です。冥王星はこのグループに属します。公転周期は約247年です。
トゥーティノ族: 海王星との2:1共鳴を持つ天体群です。公転周期は約330年です。族名の「トゥーティノ」は、「two」と「plutino」を組み合わせた造語です。

その他にも、4:3、5:3などの共鳴天体や、4:7、3:7、2:5、3:8、1:3などの共鳴の可能性が指摘される天体も知られています。

キュビワノ族

キュビワノ族は、共鳴天体でもSDOでもない、古典的なEKBOです。海王星の永年共鳴の影響を受けないため、軌道の傾斜角や離心率が小さく、ほとんどは離心率0.2以下、軌道傾斜角10°以下です。軌道長半径は、冥王星族とトゥーティノ族の間の、約41auから48auに集中しています。

キュビワノ族の名称は、最初に発見されたアルビオンの仮符号「1992 QB1」に由来します。

準惑星とEKBO

2006年のIAU総会で、静水圧平衡にある天体は準惑星に分類されることになりました。EKBOの中では、冥王星、エリス、ハウメア、マケマケが準惑星に分類されています。今後の観測により、準惑星に分類されるEKBOはさらに増えると考えられます。

EKBOの命名

EKBOを含むTNOは、世界各地の創世神話にちなんで命名されることが決められています。例えば、クワオアーはアメリカ先住民トングヴァ族の、セドナはイヌイットの創世神話に由来しています。

EKBOの重要性

EKBOの研究は、太陽系の形成と進化を理解する上で非常に重要です。これらの天体は、太陽系の初期の状態を保持していると考えられ、今後の観測や研究によって、太陽系の謎がさらに解き明かされることが期待されます。

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