エティエンヌ・ドレ

エティエンヌ・ドレの生涯と業績

エティエンヌ・ドレ（Étienne Dolet、1509年8月3日 - 1546年8月3日）は、1519年頃から1546年にかけてフランスのルネサンス期に活躍したラテン語の学者、翻訳家、印刷業者、人文主義者です。ドレはその功績により、今日でも言語学や出版の歴史に名を刻む存在となっています。

人物・来歴

エティエンヌ・ドレは、オルレアンに生まれました。国王フランソワ1世の隠し子であるとの噂もありましたが、それを裏付ける証拠はありません。しかし、彼が上流階級と何らかの関係があったことは間違いありません。1521年頃、彼はパリに移り、貴族の教師であるニコラ・ベローに学びました。その後、1526年にはイタリアのパドヴァに移り、古典学者シモン・ド・ヴィルヌーヴの指導を受けます。残念ながら、友人であり師であったヴィルヌーヴが早逝し、ドレは1530年にリモージュの司教であり、ヴェネツィアのフランス大使であったジャン・ド・ランジャックの秘書として仕官しました。この期間中、彼はラテン語の講義に参加しつつ、エレナという女性にラテン語の詩を贈るなど、私生活を楽しみました。

出版活動の開始

フランスに戻った後、ドレはトゥールーズ大学で法を学びました。当時、大学内では地域ごとの学生グループが形成されていましたが、高等法院がこれを問題視し、学生たちの集会を禁じる命令を出します。ドレはこれに反発して非難の演説を行い、その結果投獄され、追放の憂き目に遭います。1536年、彼はリヨンで『ラテン語註解』というラテン語の百科事典を出版し、これをフランソワ1世に捧げることで名声を得ます。しかし、同年には絵画家アンリ・ギーヨを殺害した罪で獄中に入ります。

1538年、国王からラテン語と他の言語に関する著作の出版許可を10年間得たドレは、さまざまなジャンルの出版物を手がけました。彼の著作は、新約聖書の解説や古典文献の解釈、さらにはエラスムスへの反論など、幅広い内容を抱えていました。彼の作品は宗教書のみならず、世俗書も含まれるなど多岐にわたりました。1542年には、『Cato christianus』を出版し、その内容が異端および無神論的だと批判され、再び逮捕されます。15ヶ月の拘禁を経て釈放された後も、出版活動を続けます。

相次ぐ逮捕の末の処刑

1544年、ドレは再び逮捕されますがその際に脱獄し、イタリア北西部のピエモンテ州に逃れます。しかし、彼はリヨンに戻って国王やナバラ王国女王に宛てた陳情書を出版しようと試みますが、再び逮捕され、パリ大学神学部からは堕落した無神論者とされます。最終的に、彼は37歳の誕生日にパリのモベール広場で絞首刑にされ、その後焚刑にされる運命となります。彼は処刑される間も冷静さを保ち、詩を詠み続けました。

評価

ドレに対する評価は分かれています。彼がプロテスタントの象徴であるか、あるいは反キリスト教的な合理主義者と見なされるかという議論があります。当時のプロテスタントたちには彼の存在は認知されておらず、特にジャン・カルヴァンからは批判されました。しかし、ドレが母国語で聖典を解釈しようとした姿勢は、評価されるべきです。

結論

エティエンヌ・ドレの生涯は、ルネサンス期における珍しい翻訳家としての道のりを描いています。彼の業績は、言語の解釈と出版の歴史において重要な位置を占め、彼の影響は今もなお我々に残っています。

もう一度検索