エテオクロス

エテオクロス（古希: Ἐτέοκλος）は、古代ギリシア神話に語られる人物です。アルゴスを支配した王イーピスを父に持ち、エウアドネーという兄弟がいたと伝えられています。彼は、アルゴスの王アドラーストスがテーバイに対して行った軍事遠征、いわゆる「テーバイ攻めの七将」に名を連ねた主要な英雄の一人として知られています。

神話における位置づけ

テーバイ攻めの七将の一員として、エテオクロスは様々な古代の著述家によって言及されています。特に、古代ギリシア三大悲劇詩人の一人であるアイスキュロスがその悲劇『テーバイ攻めの七将』の中で、またソポクレスが『コローノスのオイディープス』において、彼を七将の中でも比較的早い順位、具体的には三番目に位置づけている点は注目に値します。これは、彼が当時の伝承において重要な役割を担っていたことを示唆しています。旅行家パウサニアスの記録によれば、デルポイにアルゴス人が奉納した七将の彫像群の中にエテオクロスの像も含まれていたという事実は、彼が古くからこの遠征の重要な一員と見なされていた強い証拠と言えるでしょう。

しかし、時代が下るにつれて、七将のリストから彼の名が外される傾向も見られます。悲劇詩人エウリピデスも、『救いを求める女たち』ではエテオクロスを七将に含めていますが、後の作品である『フェニキアの女たち』ではリストから除外しています。また、ローマ時代の著述家アポロドーロスも、一般的にはエテオクロスを七将に含めていません。ただし、アポロドーロスは、他の説として、ポリュネイケースやテューデウスといったアルゴス出身ではない人物を除外し、代わりにエテオクロスとメーキステウスを加える伝承があることにも言及しており、物語の展開によっては彼を登場させています。ただし、テーバイの七つの城門それぞれを攻撃した特定の武将をリストアップする際には、エテオクロスの名は挙げていません。このような記述の差異は、テーバイ攻めを巡る伝承が時代や地域、あるいは著述家の視点によって変化していったことを示唆しており、エテオクロスの神話における位置づけが一様ではなかったことを物語っています。

テーバイ攻めでの役割と最期

テーバイ攻めにおいて、エテオクロスは特にネーイタイ門を攻撃する部隊を率いたと、アイスキュロスは記しています。彼の盾には、鎧で身を固めた勇敢な戦士が敵の城壁を攻略すべく梯子を登る図が鮮やかに描かれていました。さらに、その盾には「軍神（アレース）といえども我を城壁から落とすことはできない」という、彼の勇気と自信を示す挑発的な銘が刻まれていたと伝えられています。ネーイタイ門の守将は、スパルトイ（伝説的なテーバイ建国者カドモスの撒いた竜の歯から生まれた戦士たちの子孫）の一族であるクレオーンの子、メガレウスが務めていました。

テーバイ攻め以外のエピソードとしては、アポロドーロスの伝えるところによれば、エテオクロスはネメアー競技祭に参加し、徒競走で見事に優勝したという記録もあります。これは、彼が戦士としての力量だけでなく、卓越した身体能力も持ち合わせていたことを示す逸話と言えるでしょう。しかし、最終的にテーバイとの戦いのさなか、エテオクロスは敵方の武将レアデースとの戦闘で命を落としたとされています。

エテオクロスは、アルゴスからのテーバイ遠征において重要な役割を担った人物でありながら、その詳細な功績や最期、さらには七将としての確固たる地位についても、文献によって異なる描写がなされています。彼の存在は、古代ギリシア神話の伝承がいかに多様であり、時代とともに再解釈や変化を遂げていったかを示す一例と言えるでしょう。

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