エドゥアルド・ディ・カプア

イタリアが生んだ作曲家であり、同時に優れた歌手でもあったエドゥアルド・ディ・カプア（Eduardo Di Capua、1865年 3月12日 - 1917年 10月3日）は、南イタリアの活気あふれる都市、ナポリで生誕しました。彼の名は、特に世界中で親しまれている一曲の作曲家として、歴史に刻まれています。

音楽の学びとキャリアの始まり

ナポリの地で生を受けたディ・カプアは、その地の豊かな音楽的土壌の中で育ちました。彼は若くして音楽の道を志し、ナポリ音楽院に入学して本格的な音楽教育を受けました。音楽院での学びを通じて、作曲家としての基礎能力を培った彼は、1883年頃から自身の作品を創造する活動を開始します。

当時のナポリは、独自の民謡であるカンツォーネが市民生活に深く根差し、非常に盛んだった街でした。ディ・カプアもまた、このカンツォーネの世界に身を置き、活発な音楽活動を展開します。彼は持ち前の歌唱力を活かし、ナポリ市街やその周辺に点在する小規模な劇場や、人々が集う賑やかなレストランなどで自ら歌声を披露しながら、同時にカンツォーネの作曲に情熱を注ぐ日々を送りました。歌い手として聴衆と直接向き合う経験は、彼の作曲活動に大きな影響を与え、人々の心に直接響くようなメロディーを生み出す力となったことでしょう。

「オー・ソレ・ミオ」の誕生とその影響

彼の数ある作品の中でも、最も輝かしい光を放ち、ディ・カプアの名を世界中に知らしめたのが、不滅のナポリ民謡「オー・ソレ・ミオ」('O sole mio)です。この名曲は1898年に世に送り出されました。美しい詩情あふれる歌詞は、詩人ジョヴァンニ・カプッロによって書かれています。発表当時、この曲はナポリで開催された権威ある音楽コンテスト「タヴォラ・ロトンダ」に出品され、惜しくも第1位には届きませんでしたが、見事第2位に入賞を果たしました。この受賞を機に「オー・ソレ・ミオ」は瞬く間にナポリ中で、そしてイタリア全土で爆発的な人気を博しました。その陽光のように明るく、力強くもどこか郷愁を誘う美しい旋律と、ナポリの輝く太陽への愛を歌った歌詞は、時代を超えて世界中の人々の心を捉え、不朽の名作としての地位を確立しました。オペラ歌手をはじめ、様々なジャンルの優れた音楽家たちがこの曲を歌い、演奏するにつれて、「オー・ソレ・ミオ」は単なる地方の民謡という枠を超え、クラシック音楽の世界でも頻繁に演奏されるレパートリーとなり、ディ・カプアの名はクラシック音楽ファンにも広く知られるようになりました。今日に至るまで、「オー・ソレ・ミオ」は世界で最も認知されているイタリアの歌の一つとして、多くの人々に愛され、歌い継がれています。

その他の主要作品

エドゥアルド・ディ・カプアの作曲家としての才能は、「オー・ソレ・ミオ」一曲に尽きるものではありません。彼は生涯を通じて多くの優れたカンツォーネを生み出し、当時のナポリの音楽シーンを豊かに彩りました。彼の残した主な作品には、以下のようなものがあります。

マルガテッラ (Margate lla, 1887年)
金髪 Capille d'oro (1887年)
わたしのギター Chitarra mia (1896年)
マリア・マリ Maria Mari (1899年)
薔薇のセレナータ（薔薇夜曲） A serenata d‘e rrose (1899年)
あなたにくちづけを I'te vurria vasa (1900年)
帰れ5月 Torna maggio (1900年)
5月の薔薇 Rosa 'e maggio (1908年)
ベルサリエリ（狙撃兵）（行進曲）Ｉ Bersaglieri (1909年?)

これらの作品からも、彼が持っていた優れたメロディーメイキングの才能や、ナポリの人々の情感を巧みに音楽で表現する豊かな感受性がうかがえます。

晩年と音楽が遺したもの

エドゥアルド・ディ・カプアは、生涯を音楽活動に捧げ、故郷ナポリの音楽文化に貢献しました。1917年 10月3日、彼は自身が生まれ育ち、愛してやまなかったナポリの地で52年の生涯を終えました。彼の生きた時代は、ナポリのカンツォーネが国内外で最も華やかに歌われた時期と重なります。ディ・カプアが音楽を通じて遺した遺産、特に「オー・ソレ・ミオ」は、ナポリの明るく情熱的な文化と音楽の魂を象徴する存在として、彼の没後一世紀以上を経た今もなお、世界中の人々に感動と喜びを与え続けています。彼の音楽は、南イタリアの輝く太陽のように、人々の心に温かい光を灯し続けるでしょう。

参考文献

『MOUSA1』 (教育芸術社)

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