エドゥアール・ユベルティ

エドゥアール・ジュール・ジョゼフ・ユベルティ（Edouard Jules Joseph Huberti）は、1818年1月6日に生まれ、1880年6月12日に没したベルギーの画家です。彼はブリュッセル近郊のフラームス＝ブラバント州に位置するテルビュレンに集まり活動した美術家たちのグループ、通称「テルビュレン派」の創始者の一人として知られています。

ユベルティはブリュッセルで生を受けました。彼は幼少期から多様な才能を示し、その学業においてアントウェルペンの美術学校で建築を学び、優秀な成績を収めて賞を受けています。しかし、彼の才能は視覚芸術にとどまらず、詩作や音楽の分野でも発揮されました。彼は声楽やヴァイオリンの演奏に長け、さらには自身でオペレッタの脚本を執筆するなど、文芸や音楽の領域でも活発な活動を行っていました。

多岐にわたる活動の傍ら、彼は絵画にも関心を寄せていましたが、画家としての専門的なキャリアを本格的に開始したのは比較的遅かったと言われています。彼の作品として現在確認されている最も古い風景画は1837年頃に制作されたものですが、安定した職であった音楽教師の仕事を辞して、絵画制作に専念する決意をしたのは1860年頃になってからのことでした。これは、彼の生涯の中盤にあたる時期であり、画家としての重要な活動期間の始まりとなります。

彼の画風は、フランスのバルビゾン派に影響を受けたベルギーの風景画家、テオドール・フルモワ（Théodore Fourmois, 1814-1871）から少なからぬ影響を受けていることが指摘されています。フルモワは、自然を写実的に捉えようとする新しい風景画の潮流をベルギーにもたらした人物であり、ユベルティもまた、こうした自然主義的なアプローチを取り入れていきました。

公式な美術界への登場は1857年で、この年、ブリュッセルで開催された展覧会に初めて作品を出品しています。1860年代初頭に入ると、彼はブリュッセル近郊のテルビュレンの地に頻繁に滞在するようになります。テルビュレンは豊かな自然景観に恵まれた場所であり、多くの画家たちが集まるようになり、やがて彼らは「テルビュレン派」として知られるようになります。ユベルティはこの地の画家コミュニティの一員となり、ジュール・レイマッカーズ、ジュール・モンティニー、アルフォンス・アッセルベルフといった画家たちと交流を深めました。特に1863年頃からテルビュレンで活動を始めたイポリット・ブーランジェ（1837-1874）は、このグループの精神的なリーダーとなり、テルビュレン派を代表する存在となります。

ユベルティは、これらの画家たちと共にテルビュレンの自然を描くことで、ベルギーにおける新しい風景画の確立に貢献しました。また、彼は当時の美術団体にも積極的に参加しています。1864年にはブリュッセルの文化団体「Cercle Artistique et Litteraire」が主催する展覧会に出展し、その存在感を示しました。さらに、1868年には、カミーユ・ヴァン・カンプらによって設立された進歩的な美術家団体である自由美術協会（Société Libre des Beaux-Arts）の設立メンバーの一員となりました。この協会は、当時のアカデミズムに対する批判的な姿勢を持ち、より自由な表現を追求する画家たちの集まりであり、ユベルティもその設立に関わることで、ベルギーの近代美術の発展に貢献しました。

彼の画業と文化への貢献は国家にも認められ、1879年にはベルギー王室からレオポルド勲章を授与されるという栄誉に浴しました。これは彼の画家としての地位が公的に評価されたことを意味します。

エドゥアール・ジュール・ジョゼフ・ユベルティは、レオポルド勲章受章の翌年、1880年6月12日に、ブリュッセル近郊のスカールベークにて62歳でその生涯を閉じました。彼は多才な人物でありながらも、画家としての道を選び、特にテルビュレン派の先駆者としてベルギーにおける風景画の新しい潮流を形作る上で重要な役割を果たした人物として、美術史に名を残しています。

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