エドゥアール3世 (バル公)

エドゥアール3世（Édouard III, 1377年6月下旬 - 1415年10月25日）は、ポンタ＝ムッソン侯（在位：1399年 - 1415年）およびバル公（在位：1411年 - 1415年）という2つの重要な地位を保持した人物です。彼の生涯は、フランスとイングランド間の政治的緊張、そしてフランス国内の貴族間の権力闘争と深く関わっています。

生涯

エドゥアール3世は、兄アンリおよびフィリップが1396年のニコポリスの戦いにおいて、戦死またはその直後に死亡したことで、バル公領の継承者としての地位を確立しました。この戦いは、当時のヨーロッパにおけるキリスト教世界とオスマン帝国の衝突を示す重要な出来事でした。兄たちの死は、エドゥアール3世にとって予期せぬ公位への道を開くこととなりました。

1405年、エドゥアール3世はフランス王シャルル6世から、イングランドの脅威にさらされていたブーロネーの防衛を委ねられました。この任務は、彼がフランス王室から信頼されていたことを示しています。しかし、1406年末には、オルレアン公ルイの命によりギュイエンヌ遠征に参加しましたが、赤痢の蔓延によりフランス軍は壊滅的な打撃を受けました。この遠征の失敗は、当時の軍事作戦における衛生管理の重要性を示す事例と言えるでしょう。

1407年にオルレアン公ルイが暗殺されると、エドゥアール3世はブルゴーニュ公ジャン1世に接近し、ブルゴーニュ派の勢力と連携しました。この行動は、当時のフランス国内におけるアルマニャック派とブルゴーニュ派の対立という政治的背景を反映しています。1411年4月12日、エドゥアール3世は父の後を継いで正式にバル公となりました。しかし、彼の治世は長くは続かず、1415年のアジャンクールの戦いで戦死しました。この戦いは、百年戦争におけるイングランドの勝利を決定づけた戦いの一つとして知られています。

エドゥアール3世は未婚であり、庶子が存在しましたが、正当な後継者はいませんでした。そのため、彼の死後、弟のルイ1世がバル公の地位を継承しました。

エドゥアール3世の生涯は、中世ヨーロッパの政治、戦争、そして貴族社会の複雑な関係を垣間見ることができる事例と言えるでしょう。彼の行動や決断は、当時の政治情勢に大きく影響され、また彼自身もその影響を受けながら生きた人物でした。

参考文献
Poull, Georges (1994) (French). La Maison souveraine et ducale de Bar. Presses Universitaires de Nancy
Tuchman, Barbara (1978). A Distant Mirror. New York: Alfred A. Knopf

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