バル公領

バル伯領/公領 (Grafschaft/Herzogtum Bar)

バル伯領、後にバル公領として知られるこの地は、神聖ローマ帝国とフランス王国の間でその帰属を揺るがせてきた歴史を持つ公爵領でした。959年に成立し、現在のフランス、ムーズ県の県都バル＝ル＝デュックを首都としていました。1766年、ロレーヌ公国と共に最終的にフランスへと併合されました。

歴史

バル伯領は10世紀中頃に神聖ローマ帝国に従属する形でその歴史を歩み始めました。最初のバル伯家は、アルデンヌ家から分かれた上ロレーヌ公国の支配者であり、バル＝ル＝デュックを居城と定めました。アルデンヌ家出身の上ロレーヌ公の男系がフレデリック3世の死によって途絶えると、姉のソフィーがバル女伯を継承しました。彼女はモンベリアル伯ルイと結婚し、以降はモンベリアル家（スカルポン家）がバル伯爵位を受け継いでいくことになります。

12世紀末から13世紀初頭にかけての伯爵ティボー1世は、フランス王フィリップ2世オーギュストの同盟者として行動し、その息子アンリ2世も1214年のブーヴィーヌの戦いで目覚ましい活躍を見せました。しかし、バル伯領は常にフランス王権に従順だったわけではなく、時には武力をもって対抗することもありました。アンリ2世の孫であるアンリ3世は、1301年に妻エレオノールの父であるイングランド王エドワード1世と同盟を結んだため、フランス王フィリップ4世によって武力で屈服させられました。その結果、アンリ3世伯はマース川以西の領地の一部をフランス王に封土として差し出さざるを得なくなり、バル伯領はマース川以西の領土においてはフランス王に、それ以外の領土においては神聖ローマ帝国に臣属するという二重の臣属状態に置かれることになりました。

1354年、伯爵ロベール1世はフランス王ジャン2世の娘マリーと結婚した際、妻の叔父である神聖ローマ皇帝カール4世からポンタ＝ムッソン侯爵の称号を与えられ、さらにバル公爵に昇爵しました。これ以後、バル公爵の世継ぎはポンタ＝ムッソン侯爵と呼ばれるようになります。ロベール1世の後継者エドゥアール3世は、1415年のアジャンクールの戦いで戦死しました。

エドゥアール3世の弟で後を継いだルイ1世は枢機卿であったため子供がおらず、姉ヨランドの孫でロレーヌ女公イザベルと結婚していたルネ・ダンジューにバル公領を相続させました。これにより、バル公領は再びロレーヌ公国と同君連合となりました。1634年にロレーヌがフランスに併合された際、バル公領もまたフランス王領の一部となりました。その後、バル公領は1737年にポーランドの元国王スタニスワフ・レシチニスキが一代限りのロレーヌ公となった際にその領土の一部となり、1766年のスタニスワフの死後、再びフランスに併合されました。

バル伯

アルデンヌ家

959年 - 978年: フレデリック1世（ロレーヌ公）
978年 - 1026/1027年: ティエリー1世（ロレーヌ公）
1026/1027年: フレデリック2世（ロレーヌ公）
1026/1027年 - 1033年: フレデリック3世（ロレーヌ公）
1033年 - 1093年: ソフィー

モンベリアル（スカルポン）家

1093年 - 1105年: ティエリー2世（モンベリアル伯ティエリー1世）
1105年 - 1150年: ルノー1世
1150年 - 1170年: ルノー2世
1170年 - 1189年: アンリ1世
1189年 - 1214年: ティボー1世
1214年 - 1239年: アンリ2世
1239年 - 1291年: ティボー2世
1291年 - 1302年: アンリ3世
1302年 - 1337年: エドゥアール1世
1337年 - 1344年: アンリ4世
1344年 - 1352年: エドゥアール2世
1352年 - 1354年: ロベール1世

バル公

モンベリアル（スカルポン）家

1354年 - 1411年: ロベール1世
1411年 - 1415年: エドゥアール3世
1415年 - 1431年: ルイ1世

ヴァロワ＝アンジュー家

1431年 - 1480年: ルネ・ダンジュー（ナポリ王、ロレーヌ公）
1480年 - 1483年: ヨランド・ダンジュー（ロレーヌ女公）

ロレーヌ＝ヴォーデモン家（ロートリンゲン家）

* 1483年 - 1508年: ルネ2世（ロレーヌ公）

以後、バル公位はロレーヌ公に属することになります。

その他

1929年、ロレーヌ公ルネ2世の男系子孫であり、当時オーストリア＝ハンガリー帝国から亡命していたオットー・フォン・ハプスブルクは、ベルギー王室から貸与されたハム城で暮らすことになりました。彼はそこで「ハプスブルク」の称号ではなく、ロートリンゲン家から受け継いだ「バル公爵」を名乗り、地元の人々から好意的に受け入れられました。また、彼はベルギーのルーヴェン・カトリック大学で大学時代を過ごしました。

もう一度検索