エドウィン・モーゼス

エドウィン・モーゼス：400mハードルの伝説

エドウィン・モーゼス（Edwin Corley Moses, 1955年8月31日 - ）は、アメリカ合衆国出身の男子陸上競技選手であり、400mハードルという種目において、その名を歴史に刻みました。オハイオ州デイトンで生まれ、1983年には名誉あるジェームスサリバン賞を受賞しています。

モントリオールでの衝撃的なデビュー

1976年モントリオールオリンピックの全米最終予選、エドウィン・モーゼスは、ほとんど無名に近い存在でした。しかし、彼は当時のアメリカ400mハードル界を牽引していたジム・ボールディングや、1972年ミュンヘンオリンピック銀メダリストであるラルフ・マンといった強豪を打ち破り、48秒30という全米新記録（当時）で優勝しました。そして、初の海外レースとなったモントリオールオリンピック本番では、47秒63という驚異的な世界新記録（当時）を樹立し、金メダルを獲得しました。

無敵のモーゼス

モントリオールでの金メダル獲得後、モーゼスはまさに「無敵」という言葉がふさわしい存在となりました。彼はその後の競技会で、他の選手を寄せ付けず、常に10m以上の大差をつけて勝利し続けました。当時、47秒台で400mハードルを走れる選手は世界でモーゼスただ一人であり、ハラルト・シュミット（西ドイツ）が47秒台に到達したのは1980年代に入ってからのことでした。モーゼスの最大の強みは、1台目のハードルから最終10台目まで、全てのハードル間を13歩で走り抜けることのできる卓越した脚力と持久力でした。このような走りができる選手は、現代においても非常に稀です。

オリンピックと世界陸上

1980年のモスクワオリンピックは、アメリカ合衆国のボイコットにより出場できませんでしたが、1984年ロサンゼルスオリンピックでは、見事に金メダルを獲得しました。また、世界陸上競技選手権大会では、1983年ヘルシンキ大会、1987年ローマ大会と、2度の優勝を果たしています。

400mハードルの決勝レースにおける107連勝という前人未到の記録は、モーゼスの偉大さを象徴するものです。1988年ソウルオリンピックでは、3度目のオリンピック制覇を目指しましたが、同じアメリカのアンドレ・フィリップスに敗れ、銅メダルに終わりました。

ドーピングとの闘い

モーゼスは、ドーピングに対して断固として反対の立場をとり、ドーピング検査の導入に尽力しました。彼の行動は、その後のドーピング対策に大きく貢献しました。

人柄

実直な人柄で知られるモーゼスは、1984年ロサンゼルスオリンピックで選手宣誓の大役を務めました。しかし、緊張のあまり途中で言葉に詰まってしまうという場面もあり、彼の真面目な一面が垣間見えました。

菜食主義者でもあります。

記録

400mハードル：47秒02（1983年8月31日、世界歴代5位）

モーゼスは、400mハードルで以下の世界記録を更新しています。

47秒64（1976年7月25日）
47秒45（1977年6月11日）
47秒13（1980年7月3日）
* 47秒02（1983年8月31日）

エドウィン・モーゼスは、その圧倒的な実力とスポーツマンシップによって、陸上競技史に永遠に名を残すことでしょう。

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