エドワード・オーガスタス (ケント公)

ケント＝ストラサーン公エドワード・オーガスタス王子の生涯

ケント＝ストラサーン公エドワード・オーガスタス王子（1767年11月2日 - 1820年1月23日）は、イギリス王ジョージ3世の四男であり、後にヴィクトリア女王の父として知られています。彼の生涯は、軍人としてのキャリア、家庭生活、そして波乱に満ちた人間関係で彩られていました。

幼少期と教育

エドワードは、イギリス王ジョージ3世と王妃シャーロットの子として、ロンドンのバッキンガム館で生まれました。彼は5人兄弟の一人で、王子としての教育を受けましたが、特に軍事に関心を抱くようになりました。

軍人としてのキャリア

1786年に陸軍に入隊し、イギリス及びハノーファーの軍隊で将校としての道を歩み始めました。彼はジブラルタルやカナダなどで勤務し、その間に指導力を発揮しましたが、部下に対する過酷な処遇から反乱を引き起こすこともありました。特に、彼は自己の快楽のために部下に厳しい刑罰を科し、その結果、兵士たちから反感を買いました。

1799年には落馬事故に遭い、イギリスに帰国することとなります。帰国時にケント公爵、ストラーサン公爵、ダブリン伯爵の称号を授与され、大将に昇進しました。その後も北アメリカ駐留軍最高司令官としての任務を経て、ジブラルタルの総督に任命されました。

フリーメイソンと後の活動

1813年にはフリーメイソンのイングランド・古代派グランドロッジのグランドマスターに就任しますが、まもなくして古代派と近代派のグランドロッジが統合され、連合グランドロッジが設立されました。この際、近代派からサセックス公爵オーガスタス・フレデリック王子がグランドマスターに選ばれるという出来事がありました。

ナポレオン戦争には参加せず、ナポレオンの敗北後はブリュッセルで生活を始めました。その頃、彼はジブラルタルで知り合ったフランス人女性ジュリー・サン・ローランと長きにわたり同棲し、愛情を育んでいました。

結婚と家族

1817年、長兄である摂政皇太子ジョージの一人娘シャーロット・オーガスタが薨去すると、王族には適切な婚姻が求められました。ケント公も議会から資金援助を提示され、新たな妻を迎えることが期待されました。彼は借金から逃れることを優先し、ジュリーとの関係を断ち、ザクセン＝コーブルク＝ザールフェルト公国の公フランツの娘であるヴィクトリアと結婚しました。

1819年にはこの夫婦の間にアレクサンドリナ・ヴィクトリアが誕生し、後のヴィクトリア女王となります。しかし、エドワードはそのわずか8か月後に死去し、彼の死は家庭に大きな影響を与えることとなりました。

人物像と性格

エドワードは185 cmの身長とたくましい体つきを持ち、エキセントリックな性格で知られていました。彼は部下には無慈悲な態度を取る一方で、同階級の将校たちからの人気を博していました。その独特な性格は、彼の軍人としてのイメージと私生活における選択に多くの影響を与えたと言えます。

地名への影響

エドワードは、カナダのプリンスエドワード島やプリンスエドワード諸島、さらにオンタリオ州内の地域にも名前が付けられています。これにより、彼の名は今も尚、歴史に刻まれています。

参考文献

1. 森護『英国王室史事典-Historical encyclopaedia of Royal Britain-』
2. ワイントラウブ, スタンリー 著、平岡緑 訳『ヴィクトリア女王〈上〉』
3. 吉村正和『図説 フリーメイソン』
4. Heathcote, Tony (1999)による『The British Field Marshals, 1736–1997: A Biographical Dictionary』

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