エドワード・サマセット (第2代ウスター侯)

第2代ウスター侯爵エドワード・サマセットの生涯

第2代ウスター侯爵エドワード・サマセット（1602/1603年 - 1667年）は、イングランドの清教徒革命（イングランド内戦）から王政復古期にかけて活躍した貴族であり軍人です。初代ウスター侯爵ヘンリー・サマセットの長男として生まれ、カトリック教徒として育てられました。

生い立ちと初期の活動

サマセットは、1628年に父がウスター伯位を継承すると同時にラグランのハーバート卿と称されるようになります。彼は幼少期から発明に強い関心を示し、特に水力に関する構想を抱いていたとされています。

清教徒革命での活動

1642年に第一次イングランド内戦が勃発すると、サマセットは王党派としてチャールズ1世を支援しました。彼は10万ポンドの資金を提供し、南ウェールズで兵を挙げ、グロスタシャーへと進軍しましたが、議会派の反撃に遭い敗走。この戦いで多くの兵と武器を失い、父との間にも不和が生じました。その後、アイルランドとの交渉を模索し始めます。

アイルランドでの活動と失脚

1644年、サマセットはチャールズ1世にアイルランドからの援軍を提案し、交渉役として自らを任命するよう申し出ます。彼は1万人もの援軍をアイルランドから提供させ、さらにカトリック諸国からの資金援助を取り付けるという壮大な計画を立てましたが、これは現実離れしたものでした。しかし、チャールズ1世はこの提案に乗り気になり、彼をグラモーガン伯に叙爵し、アイルランド軍の指揮権を与えました。さらに、彼の息子とチャールズ1世の娘の結婚も約束されました。

極めつけは、サマセットが秘密裏にサマセット公に叙爵されたことでした。しかし、チャールズ1世は気が変わり、アイルランドとの交渉をアイルランド総督のオーモンド侯に任せました。しかし交渉が進展しない状況を受け、チャールズ1世は年末にサマセットを派遣することを決定。カトリック刑罰法の執行停止を条件に、アイルランド同盟との合意を目指しました。1645年、サマセットはアイルランドへ向かいますが、嵐で船が難破し到着が遅れてしまいます。

サマセットは8月にオーモンド侯に無断でアイルランド同盟と秘密協定を結び、カトリック信仰を認める代わりに1万人の兵士をイングランドに派遣することを約束しました。しかし、ローマ教皇の特使リヌチーニの介入により、事態は急変。秘密協定がイングランド議会に露見し、チャールズ1世はサマセットを切り捨てます。サマセットはオーモンド侯に逮捕されますが、国王の名誉を守りたいオーモンド侯の配慮で釈放されます。しかし、リヌチーニの妨害により、アイルランドからの援軍計画は完全に破綻しました。サマセット公の叙爵も否定され、フランスへ亡命することとなります。

その後

1646年末に父が亡くなり、サマセットはウスター侯を継承しました。1649年に追放処分を受け、1653年にイングランドへ帰国したところを発見され、大逆罪でロンドン塔へ投獄されましたが、翌年に釈放されました。その後は工学に興味を示し発明に熱中する日々を送りました。1660年の王政復古の際、サマセット公位の継承をチャールズ2世に願い出ますが却下され、グラモーガン伯位も認められませんでした。1667年に死去、ウスター侯位は長男ヘンリーが継承。ヘンリーは後にボーフォート公爵に叙爵されました。

子女

サマセットは、エリザベス・ドーマーと結婚し、1男2女を儲けました。エリザベスが亡くなった後、マーガレット・オブライエンと再婚しましたが、彼女が産んだ娘は夭折しました。

ヘンリー: 第3代ウスター侯爵、初代ボーフォート公爵
アン: ノーフォーク公ヘンリー・ハワードと結婚
エリザベス: ポウィス侯ウィリアム・ハーバートと結婚

まとめ

エドワード・サマセットは、清教徒革命期のイングランドにおいて、その野心と行動力、そして多くの失敗を通して、歴史に名を残した人物です。彼の人生は、当時の政治情勢と宗教対立、そして個人の運命が複雑に絡み合った結果であると言えるでしょう。

参考文献
森護 『英国の貴族 遅れてきた公爵』 大修館書店、1987年。
若原英明『イギリス革命史研究』未來社、1988年。
シセリー・ヴェロニカ・ウェッジウッド著、瀬原義生訳『イギリス・ピューリタン革命―王の戦争―』文理閣、2015年。
サミュエル・ローソン・ガードナー著、小野雄一訳『大内乱史Ⅱ（上）:ガーディナーのピューリタン革命史』三省堂書店、2018年。

関連項目
永久運動の夢
トーマス・セイヴァリ
蒸気機関

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