エドワード・サーロー (初代サーロー男爵)

エドワード・サーロー：激動の時代を駆け抜けた大法官

エドワード・サーロー（1731年 - 1806年）は、18世紀のイギリスにおいて、弁護士、裁判官、そしてトーリー党の政治家として活躍しました。彼は、法務次官、法務長官、そして大法官という要職を歴任し、特にジョージ3世の治世下で大きな影響力を行使しました。本稿では、彼の生涯、政治的キャリア、そして彼の人となりについて詳しく解説します。

生い立ちと初期のキャリア

1731年、聖職者の息子として生まれたサーローは、ケンブリッジ大学を退学後、弁護士の道へ進みます。インナー・テンプルで法律を学び、1754年に弁護士資格を取得。大胆かつ断固とした性格で、弁護士として名声を確立しました。1767年のダグラス訴訟事件では、貴族院での逆転勝訴に貢献し、その名声を不動のものとしました。

庶民院議員から法務長官へ

1765年、庶民院議員に当選したサーローは、ベッドフォード公爵派に属し、アメリカ植民地問題に関する議論で頭角を現します。ノース内閣成立後、1770年に法務次官、1771年には法務長官に昇進。法務長官として、1773年東インド法の起草に関与するなど、重要な役割を果たしました。

大法官としての権勢

1778年、サーローは大法官に任命され、男爵に叙されます。ジョージ3世の腹心として、絶大な影響力を誇り、内閣改造や政策決定に深く関与しました。貴族院での弁論を主導し、カトリック解放法案やゴードン暴動鎮圧を支持するなど、積極的に政治に関わりました。しかし、アメリカ独立戦争の敗北後、フォックス＝ノース連立内閣が成立すると、サーローは大法官を辞任することになります。

小ピットとの関係悪化と失脚

1783年、小ピット内閣が成立すると、サーローは再び大法官に就任します。しかし、ジョージ3世の摂政問題をめぐり、サーローが王太子ジョージと野党ホイッグ党との交渉を始めたことで、小ピットとの関係に亀裂が生じます。二枚舌外交が露呈し、小ピットからの信頼を失ったサーローは、1792年に大法官を解任され、政界から失脚します。

退任後の晩年

大法官退任後、サーローは貴族院での活動を続けましたが、以前ほどの存在感はありませんでした。療養温泉やリゾートで過ごすことが多く、1806年に痛風のため死去しました。生涯未婚であり、1778年創設の男爵位は廃絶しましたが、1792年創設の男爵位は、特別残余権に基づき、弟の息子が継承しました。

人物像と評価

サーローは、背が高く体格も良く、威厳のある人物でした。サミュエル・ジョンソンやジョン・ホーン・トゥックといった知識人とも親交があり、芸術にも造詣が深かったとされています。物腰が荒っぽく、敵も多かった一方で、ジョージ3世や女性には常に上品な態度で接したと伝えられています。その率直な物言いは、弁論では有効でしたが、内閣の同僚としては必ずしも心地よい存在ではなかったようです。同時代の人物からは、その議会演説は、見識の深さよりも、相手を威圧する力で効果を発揮したと評されました。

エドワード・サーローは、激動の時代を駆け抜けた、毀誉褒貶相半ばする政治家でした。その波乱に満ちた生涯は、18世紀イギリスの政治史を語る上で欠かすことのできない重要な要素です。

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