エドワード・T・ホール

エドワード・T・ホール

エドワード・T・ホール（Edward Twitchell Hall, Jr.、1914年5月16日 - 2009年7月20日）は、アメリカ合衆国の文化人類学者であり、異文化コミュニケーション学の分野を切り開いた先駆者として知られています。ノースウェスタン大学の人類学科名誉教授でもありました。日本では「E・T・ホール」と表記されることもあります。

生い立ちと学歴

ホールは1914年にミズーリ州のウェブスター・グローブス市で生まれ、ニューメキシコ州で育ちました。1936年にデンバー大学の人類学科を卒業し、1938年にはアリゾナ大学大学院で人類学の修士号を取得しました。その後、1942年にはコロンビア大学大学院で人類学の博士号を取得しています。

職歴

ホールは、1946年から1948年までデンバー大学の人類学科教授を務めました。その後、1948年から1951年にはベニントン大学の教授として教鞭を執りました。1950年から1955年の間には、米国国務省外務職員局で研修部の主任教官を務め、その間、ワシントン精神医学大学院大学でも教鞭をとりました。

1955年に『Scientific American』に発表した論文「The Anthropology of Manners」が注目を集めました。さらに、1959年には著書『The Silent Language（沈黙のことば）』を出版し、一躍その名を知られることとなりました。1963年から1967年まではイリノイ工科大学の人類学科教授を務め、1966年には『The Hidden Dimension（かくれた次元）』を出版しています。1967年から1977年まではノースウェスタン大学の人類学科教授を務め、1976年に『Beyond Culture（文化を超えて）』を出版しました。

日本との関わり

ホールは日本とも深い関わりを持っており、1976年に来日し、国際基督教大学で開催されたシンポジウムに出席しました。また、1981年には筑波大学、1988年には国際文化会館で文化とコミュニケーションに関する講演を行いました。

研究内容と業績

第二次世界大戦後、ホールはミクロネシア文化の研究を行い、その後は社会学、言語学、動物行動学など幅広い分野に関心を持ちました。彼の研究は、異文化コミュニケーションにおける非言語的要素の重要性を強調しています。

特に、著書『沈黙のことば』では、ボディーランゲージの概念を提唱しました。また、世界の文化を「高コンテクスト」と「低コンテクスト」に分類し、文化によるコミュニケーションスタイルの違いを分析しました。高コンテクスト文化には、日本、中国、アラブ諸国などが含まれ、低コンテクスト文化には、ドイツ、アメリカ、スカンジナビア諸国などが含まれるとしました。

さらに、ホールは「近接学」を提唱し、対人距離が文化によって異なることを指摘しました。時間感覚に関しても「ポリクロニック（多時間的）」と「モノクロニック（単時間的）」な文化に分け、時間に対する文化的な考え方の違いを示しました。

その他の活動と晩年

退職後はノースウェスタン大学の名誉教授となり、ニューメキシコ州に居住しました。1997年と1999年にはニューメキシコ大学大学院で異文化コミュニケーションの授業を担当しました。2009年にサンタフェの自宅で95歳で亡くなりました。

主な著書

The Silent Language (1959) 『沈黙のことば』
The Hidden Dimension (1966) 『かくれた次元』
The Fourth Dimension In Architecture: The Impact of Building on Behavior (1975, Mildred Reed Hallとの共著)
Beyond Culture (1976) 『文化を超えて』
The Dance of Life: The Other Dimension of Time (1983)
Handbook for Proxemic Research
Hidden Differences: Doing Business with the Japanese
An Anthropology of Everyday Life: An Autobiography (1992)
Understanding Cultural Differences - Germans, French and Americans (1993)
West of the Thirties. Discoveries Among the Navajo and Hopi (1994)

関連文献

ホールに関する研究は数多く、以下のような文献が参照されています。

Hastings, S. O., Musambira, G. W., & Ayoub, R. (2011). Revisiting Edward T. Hall’s work on Arabs and olfaction: An update with implications for intercultural communication scholarship.
Leeds-Hurwitz, W. (2014). Notes in the history of intercultural communication: The Foreign Service Institute and the mandate for intercultural training.
Rogers, E. M. (2000). The extensions of men: The correspondence of Marshall McLuhan and Edward T. Hall.
Rogers, E. M., Hart, W. B., & Miike, Y. (2002). Edward T. Hall and the history of intercultural communication: The United States and Japan.
Shuter, R. (2014). The centrality of culture in the 20th and 21st centuries.

参考文献

平野健一郎 著「国際文化論」、岩田一政、小寺彰、山影進、山本吉宣編 編『国際関係研究入門』東京大学出版会、2003年

外部リンク

Gifts of Wisdom: An Interview with Dr. Edward T. Hall
Edward T. Hall, Proxemic Theory, 1966
Edward T. Hall and the History of Intercultural Communication: The United States and Japan
Obituary-Edward Hall Loves New Mexico
Obituary, NYTimes
Edward Hall Obituary (2009) - Santa Fe, NM - Santa Fe New Mexican
『エドワード・T. ホール』 - コトバンク
『ホール（Edward T. Hall）』 - コトバンク

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