エブラウクス

エブラウクス：伝説のブリトン王

エブラウクスは、中世の年代記『ブリタニア列王史』に登場する伝説的なブリトン人の王です。父であるメンプリキウス王の圧政の後、王位を継ぎ、ブリテン島を39年間統治したとされています。

『ブリタニア列王史』におけるエブラウクス

『ブリタニア列王史』によれば、エブラウクスは長身で怪力無双の王として描かれています。彼はトロイのブルータス以来初めてガリアに戦争を仕掛け、略奪によって得た豊富な金銀を祖国に持ち帰りました。

エブラウクスは2つの重要な居留地を建設したとされています。一つは、ハンバー川の対岸に建設された「カール・エボラクウ（エブラクウスの街エボラクム）」、後のヨークです。もう一つは、アルバニア（現在のスコットランド）に建設されたアルクッド市と城塞アグネット、現在のダンバートンにあたります。

エブラウクスは20人の妻を持ち、20人の息子と30人の娘をもうけました。娘の一人であるガラエスは、当時ブリタニアとガリアで最も美しいと評判でした。娘たちはイタリアのアルバ・シルウィウスのもとに送られ、トロイア人の貴族と結婚しました。息子たちは、ウィリデ・スクトゥム（緑の楯）のブルータスを除く全員が、アッサラクを指揮官としてゲルマニアを征服したとされています。

エブラクウスの死後、息子のブルータスが緑盾王ブルータスとして王位を継承しました。

その後の伝承

エブラウクスは、後世の様々な文献にも登場します。1190年に書かれた詩『ブルータス』は、ヨークの設立を記念して書かれ、エブラウクスに関する記述で締めくくられています。アレクサンダー・ネッカムのDe utensilibus and De naturis rerum（1213年)）でも、「見よ、祝福されたエブラウクスが築いた都市を！」と称賛されています。

14世紀のヨーク教会の年代記では、エブラクスの物語がさらに発展させられています。学者ポリドール・ヴァージルは、エブラウクスが「現在スコットランドと呼ばれるブリテン最果ての地に、現在エディンバラ城と呼ばれているメイデンズの街を建てた」と述べています。Registrum Malmesburienseには、エブラウクスがモントローズ城を建てたと記されています。ジャコモ・フィリッポ・フォレスティは、エブラウクスが多くの都市を建設し、60年間統治したと主張しています。

1486年、ヘンリー7世がヨークを訪れた際、エブラウクスを演じる役者が出迎え、都市の鍵を贈りました。これは、エブラウクスがヨークの創設者として認識されていたことの表れです。

オールド・ヨーク像

ヨークには、「オールド・ヨーク」と呼ばれる古代の像があり、エブラウクスを象ったものとされています。この像は、セント・サヴィアゲートとコリアゲートの交差点に位置し、15世紀には境界標識として機能していました。元々は古代ローマの記念碑の一部であった可能性があります。1501年にギルドホールに移され、元の場所を示す石版が設置されました。この像はその後、マンション・ハウスの建設中にギルドホールからブーサム・バーの城壁の門の龕に移され、1834年までそこにありました。

エブラウクスは、伝説的な存在でありながら、ヨークの歴史と深く結びついた人物として、後世に語り継がれています。

もう一度検索