エペイオス

エペイオス（古希: Ἐπειός, Epeios）は、ギリシア神話に登場する人物です。主に同名または類似した名前を持つ二人の人物が知られており、それぞれ異なる伝承の中で重要な役割を果たしています。

エンデュミオーンの子

一人は、エーリス地方の王エンデュミオーンの息子であるエペイオスです。彼はパイオーン、アイトーロス、エウリュキュダーといった兄弟を持っていました。また、コローノスの娘アナクシロエーとの間にはヒュルミナーという娘が生まれました。このヒュルミナーは後にポルバースの妻となり、勇士アクトールの母、さらにモリオネの祖母となります。

父エンデュミオーンは、自身の王位後継者を決めるため、息子たちによる徒競走を実施しました。この競争で見事勝利を収めたのがエペイオスであり、彼は父の後を継いでエーリスの王となりました。エーリスの人々が後に「エペイオス人（エペイオイ）」と呼ばれるようになったのは、彼の名に由来すると伝えられています。しかし、彼の治世中に、ピーサの王オイノマオスを打ち破って新たに王となったペロプスによって、聖地オリュンピアを含む一部の領土を奪われるという出来事がありました。エペイオスが亡くなった後、王位は彼の弟にあたるアイトーロスに引き継がれました。

パノペウスの子

もう一人の著名なエペイオスは、パノペウスの息子です。パノペウスは、アイギーナ島の王アイアコスの孫であり、その息子ポーコスの子にあたります。エペイオスにはアイグレーという名前の姉妹もいました。彼は、名高いトロイア戦争にギリシア側の武将として参加した一人です。彼は特に優れた拳闘家として知られており、また非常に高い技術を持つ工匠（職人）としても評価されています。数ある功績の中でも、トロイアを陥落させるための決定的な策略である「トロイアの木馬」の建造者として、彼は最も広くその名を知られています。

伝えられるところによると、彼は故郷のキュクラデス諸島から30隻もの船を率いてトロイア戦争に加わったとされています。戦争中に開催されたパトロクロスの葬礼競技では、拳闘の種目において強豪として知られるエウリュアロスを打ち破り、その力量を示しました。しかし、通常の戦場での戦闘行為においては、目立った活躍はあまり伝えられていません。

トロイア戦争が長引き、終結が見えない状況となった末期、オデュッセウスが提案した画期的な作戦、すなわち木馬を用いた奇襲策が実行されることになります。この作戦において、エペイオスは中心的な役割を担いました。彼は、内部が空洞になっており、多数の兵士を隠せる巨大な木馬を、その卓越した工匠技術を駆使して建造したのです。この木馬建造の背景にはいくつかの説があります。一説には、女神アテーナーが直接エペイオスを助けて木馬を造ったとも、あるいはアテーナーからの具体的な助言を受けて建造が進められたとも言われています。また、トロイア側の予言者でありながらギリシア軍に捕らえられ、助言を与えたとされるヘレノスの予言に基づいて建造されたとする伝承も存在します。特にスミュルナのクイントゥスの記述によれば、オデュッセウスが木馬作戦を発案したその夜、エペイオスの夢の中にアテーナーが現れ、木馬を造るよう命じ、さらに女神自身も建造を手伝うと告げたとされています。

エペイオスは、自身が造った木馬の構造、特に兵士が内部に出入りするための扉の開閉機構や、乗り降りに使用するはしごについて誰よりも詳しく知っていました。そのため、木馬の内部に潜むことになった選抜された戦士たちの一員として、彼は最後に木馬の中に乗り込む役目を果たしました。巨大な木馬がトロイア市民によって城壁内に運び込まれた後、内部で待機していたギリシアの戦士たちは、外部に潜入していたシノーンからの合図を待ちました。合図が出されると、エペイオスは木馬の隠された扉を開き、内部から戦士たちを次々と外へ出したのです。これにより、トロイアは不意を突かれ、陥落へと至りました。彼は戦闘での勇猛さよりも、その卓越した技術と知力によって、トロイア戦争の勝利に決定的な貢献を果たした人物として、後世に名を残しています。

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