ポルバース

ポルバース



ギリシア神話において、ポルバース（古希: Φόρβας, Phorbās）という名前は、非常に多くの同名人物に用いられています。長音を省略してポルバスと表記されることもあります。その出自や活躍は多岐にわたり、主に以下の人物が挙げられます。

ラピテースの子


テッサリアー地方を拠点とするラピテース族の王ラピテースと、エウリュノモスの娘オルシノメーの子として生まれたポルバースです。ペリパースとは兄弟、トリオパースとは異母兄弟にあたります。エペイオスの娘ヒュルミーネーと結婚し、アウゲイアース、アクトール、ティーピュスという息子たちをもうけました。当初は兄弟ペリパースと共にペーネイオス川流域を治めていましたが、後にアカイア地方のオーレノスへ移住しました。さらに、エーリス地方の王アレクトールに招かれ、その地で王権の一部を分与されました。ただし、旅行家パウサニアースの記録では、彼をエーリス地方出身の英雄としています。

トリオパースの子


カナケーの息子であるトリオパースと、ミュルミドーンの娘ヒスキュラの子として知られるポルバースです。エリュシクトーン、イーピメデイア、ペレーンといった兄弟姉妹がいます。
ロドスのポリュゼロスを引用するヒュギーヌスの記述によると、へびつかい座はこのポルバースであるとされています。航海中に嵐に遭い、ロドス島に漂着した際、島は多くの蛇、特に巨大な大蛇による被害に苦しめられていました。ポルバースはこれらの蛇をすべて退治し、島民を救済しました。アポローン神の寵愛を受けていたため、後に蛇を殺す姿で星座に加えられたと伝えられています。シケリアのディオドーロスも同様の伝承を記しており、蛇の害に悩んだロドス人がデーロス島のアポローンの神託に伺いを立てたところ、ポルバースの入植を受け入れるよう命じられたと述べています。入植地を探していたポルバースはロドス島に招かれ、蛇を退治した後に島へ移住しました。
ヒュギーヌスは彼をアポローンの寵が厚い人物としていますが、『ホメーロス風讃歌』第3歌の「アポローン讃歌」では、ポルバースはアポローンの恋敵として言及されている可能性があります。

アルゴスの王の1人


アルゴスの系譜に名を連ねる王の一人です。パウサニアースによると、アルゴスの王アルゴス（ポローネウスの娘ニオベーとゼウスの子）の子であり、ペイラソス、ティーリュンス、エピダウロスとは兄弟にあたります。また、トリオパースの父とされています。このトリオパースからはイーアソスとアゲーノールが生まれ、イーアソスはイーオーの、アゲーノールはクロトーポスの父となり、さらにクロトーポスはステネラースをもうけたと系譜が続きます。
しかし、アルゴス王家の系譜伝承は錯綜しており、アポロドーロスやヒュギーヌスの系譜ではポルバースの名前は確認できません。ヒュギーヌスではトリオパースはアルゴスの子ピラントスの子とされています。
一方で、キリスト教の教父たちの伝承では、ポルバースをアルゴスの第6代目の王として位置づけています。

ポセイドーンの子


アカルナーニアー地方出身で、海神ポセイドーンを父に持つ人物です。エウモルポスがアテーナイ王エレクテウスに対して戦争を起こした際、エウモルポスの軍に加わり、アテーナイと戦いました。

ヘーリオスの子


太陽神ヘーリオスの息子で、娘アムブラキアーの父として知られます。娘アムブラキアーは、エーペイロス地方にある都市アムブラキアーの名の由来となったと伝えられています。

メーティオーンの子


ヌビア地方のシュエーネー出身で、メーティオーンを父に持つ人物です。ピーネウスの部下として、英雄ペルセウスがアイティオピアーの王女アンドロメダーと結婚する際に、ピーネウスと共に王宮を襲撃しました。しかし、同僚のアムピメドーンとともに床の血で足を滑らせ転倒したところを、ペルセウスに討たれました。

ラーイオスの羊飼い


テーバイの王ラーイオスに仕える羊飼いです。王命により、生まれたばかりの幼児オイディプースを捨てるためにキタイローン山へ向かいました。山で家畜を放牧していた別の羊飼いの男と出会い、赤子を託しました。この男はコリントスの王妃メロペーに赤子を献上しました。後にテーバイの王となったオイディプースは、自らの出自を探る中で、かつてラーイオスの羊飼いであったポルバースを王宮に呼び出しました。ポルバースは、イオカステーが生んだ赤子の運命について証言しました。

レスボス島の王


レスボス島を治めていた王です。娘にディオメーデーがいましたが、トロイア戦争の初期にアキレウスの攻撃を受け、殺害されました。娘も多くの財宝と共に略奪され、後にアキレウスの戦利品として分配され、奴隷として仕えることになりました。

イーリオネウスの父


トロイア人のイーリオネウスを息子に持つ人物です。ヘルメース神の寵愛を受けており、非常に豊かな家畜と財産を持っていました。しかし、一人息子のイーリオネウスはトロイア戦争で命を落とし、ペーネレオースあるいは小アイアースに討たれたと伝えられています。

デクシテアーの父


デクシテアーという娘の父です。プルータルコスの記述によると、娘デクシテアーはアイネイアースとの間に、ロームルスとレムスを生んだとされています。

その他の人物


上記の他にも、以下のような人物がポルバースという名前で伝わっています。

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