エミリー・フィッツロイ

エミリー・フィッツロイ（Emily Fitzroy）は、1860年5月24日に生まれ、1954年3月3日にその生涯を終えた、イングランド出身のベテラン女優です。俳優としての道のりはまず舞台から始まり、やがて活動の場をアメリカ合衆国へと移しました。

アメリカ滞在中、彼女はニューヨークのブロードウェイで確固たる地位を築きました。1912年から1922年までの約10年間で、6本の演劇と1本のミュージカルに出演し、その名を知られるようになります。ブロードウェイでの主な出演作品としては、1912年の『Just to get married』や『Lady Patricia』、1914年から1915年にかけて上演されたミュージカル『Lady Luxury』、そして1922年の『What the Public wants』などが挙げられます。

映画への進出は、1915年であったと記録されています。その後、1944年に引退するまでの約30年間にわたり、エミリー・フィッツロイは実に多作なキャリアを築きました。出演した映画作品は、記録によるとちょうど100本に上ると言われています。彼女の映画キャリアの大部分はアメリカ合衆国での活動であり、イギリス映画への出演はごくわずかでした。また、サイレント映画の時代にも数多くの作品に出演しており、その数は全出演作の約6割にあたる60本ほどに及びます。

その長い映画人生において、彼女は多くの著名な監督や俳優たちと共演しました。特に知られる作品としては、以下のようなものが挙げられます。

D・W・グリフィス監督作には2度出演しており、リリアン・ギッシュやリチャード・バーセルメスと共演したサイレント映画の傑作『東への道』（Way Down East, 1920年）、そしてマレーネ・ディートリヒ主演の『焔の女』（The Flame of New Orleans, 1941年）があります。
キング・ヴィダーがメガホンを取ったサイレント時代の活劇『剣侠時代』（Bardelys the Magnificent, 1926年）では、ジョン・ギルバートやエレノア・ボードマンと共演しています。
エドマンド・グールディング監督によるトルストイ原作の映画化『アンナ・カレニナ』（Love, 1927年）では、再びジョン・ギルバートと、伝説的な女優グレタ・ガルボとの共演を果たしました。
トーキー時代に入ってからも活躍は続き、ジョージ・スティーヴンス監督作『病院の一夜』（Vigil in the Night, 1940年）では、キャロル・ロンバードやブライアン・エイハーンと共演しています。

これらの代表作の他にも、エミリー・フィッツロイは多岐にわたる作品に出演しました。例えば、初期のサイレント作品では『East Lynne』(1916)や『The Climbers』(1919)、『女の魅力』（Fascination, 1922）などがあり、トーキー移行期には『ショウボート』（Show Boat, 1929）、その後も『支那海』（China Seas, 1935）、そして引退に近い時期の『ドーヴァーの白い崖』（The White Cliffs of Dover, 1944）など、ジャンルや時代を超えた多数の作品でその存在感を示しました。

エミリー・フィッツロイは、舞台で培った確かな演技力で、サイレント映画の時代からトーキー映画の時代にかけて、特にハリウッド作品において欠かせない脇役として活躍しました。その長いキャリアと豊富な出演作は、20世紀前半の映画史を語る上で重要な一端を担っています。

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