エミール・ブルンナー

エミール・ブルンナー：弁証法神学を代表するスイスの神学者

エミール・ブルンナー（1889年-1966年）は、20世紀を代表するスイスのプロテスタント神学者です。カール・バルトらと共に弁証法神学運動の中核を担い、新正統主義の主要な思想家として知られています。その生涯と思想、そして日本における活動について詳しく見ていきましょう。

生涯：スイスから日本へ、そして世界的影響

チューリッヒ近郊で生まれたブルンナーは、チューリッヒ、ベルリン、ニューヨークのユニオン[[神学校]]で神学を学びました。8年間の牧会経験の後、チューリッヒ大学神学部教授として組織神学と実践神学を教鞭をとり、1942年から1944年には同大学の総長も務めました。

ブルンナーは、キリスト教布教の不徹底が日本のファシズム台頭を招いたと考えており、戦後の日本に大きな関心を抱いていました。1949年には、富士見町教会や東京[[神学大学]]、同志社大学などで講演を行い、1953年には国際基督教大学の客員教授に就任しました。日本の無教会主義にも触れ、日本での永住も視野に入れていましたが、健康を害したため1955年に帰国することになりました。帰国後も、病に伏せながらもテープレコーダーを使って精力的に執筆活動を続けました。

思想：聖書解釈と新正統主義

ブルンナーの思想は、自由主義神学への批判と、伝統的な正統主義への独自の解釈から成り立っています。彼は17世紀の正統主義を「紙の教皇」と呼び、聖書の奇跡や霊感の教理を批判したことから、福音派やキリスト教根本主義者からの反発を受けました。しかし、その一方で、カール・バルトやパウル・ティリッヒらと共に新正統主義運動の中心的存在として、現代神学に多大な影響を与えました。保守派からは、新正統主義が自由主義神学と大差ない中庸な立場であると批判されましたが、ブルンナーの思想は、プロテスタント神学の新たな地平を開くものであったと言えるでしょう。

業績：多岐にわたる著作活動

ブルンナーは数多くの著作を残しており、その内容は聖書解釈、神学、倫理、社会問題など多岐に渡ります。主な著作としては、『聖書の真理の性格』、『神学論集』、『倫理・社会論集』、『フラウミュンスター説教集』、『教会・信仰・完成についての教説』、『創造と救贖についての教説』、『神についての教説』、『正義　-社会秩序の基本原理に就いて-』などがあります。これらの著作は、今日でも世界中の神学者や神学生によって研究され、高く評価されています。

まとめ：時代を超えて影響を与える神学者

エミール・ブルンナーは、自由主義神学への批判と独自の聖書解釈、そして新正統主義運動への貢献を通して、20世紀のプロテスタント神学に大きな足跡を残しました。日本の戦後復興にも関与した彼の活動は、国際的な視点からも重要な意味を持ちます。彼の著作は、現代においても神学研究に不可欠な資料であり、その思想は現代社会の様々な問題を考える上で、今もなお示唆に富むものです。彼の生涯と業績は、現代神学を考える上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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