エムルシン

エムルシンは、アミグダリンやプルナシンといった青酸配糖類を加水分解する酵素群の混合物です。これは、様々な種類のβ-グルコシダーゼを含んでいます。

特徴

エムルシンは、主に苦味アーモンド、アンズの種子、未成熟なウメなど、バラ科の多くの植物の種子や果実に含まれています。これらの植物には青酸配糖体が含まれており、エムルシンはこれらの物質をグルコース、マンデロニトリル、そして猛毒のシアン化水素に分解します。しかし、シアン化水素は時間とともに徐々に消失するため、熟したウメやアンズなどを人が食べても、通常はシアン化物中毒になる心配はほとんどありません。

エムルシンに含まれる様々な酵素の中で、特に活性が高いのはβ-グルコシダーゼとβ-ガラクトシダーゼです。この酵素活性が種子中のエマルジョン（乳濁液）に見られることから、1837年にユストゥス・フォン・リービッヒによって「エムルシン」と名付けられました。

生体内での働き

高濃度の青酸配糖体が残った状態で摂取すると、エムルシンおよび胃酸によって青酸配糖体が加水分解され、シアン化水素が発生し、シアン化物中毒を引き起こす可能性があります。そのため、青酸配糖体を含む食品を摂取する際には、適切な処理を行い、シアン化水素の量を減らすことが重要です。例えば、梅酒を作る際には、梅をしっかりと洗浄し、適切な量のアルコールを使用することで、シアン化水素の発生を抑制することができます。

エムルシンは、自然界に存在する多くの植物に含まれる酵素であり、その働きは、食品の加工や、植物の防御機構など、様々な面で重要な役割を果たしています。

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