エモーション (バンダイナムコグループ)

株式会社エモーションは、アニメーション作品のプロデュースや、ウェブコミック、電子書籍の編集・発行を主な事業としていた日本の企業です。2011年にバンダイビジュアルへ吸収合併されるまで、日本のアニメ業界において重要な役割を果たしていました。

エモーションの歴史は、1983年の設立にまで遡ります。当初は「エモーションミュージック」という社名で、バンダイグループ関連のアニメやゲーム音楽の原盤権管理を主な業務としていました。2000年に解散したバンダイ・ミュージックエンタテインメント（旧アポロン音楽工業）が保有していた楽曲の原盤権の一部も管理していたとされています。これらの楽曲は、日本のアニメ音楽史において重要な位置を占める作品も多く含まれており、エモーションミュージックは日本のアニメ音楽文化の発展に貢献しました。

2003年には、バンダイ直轄からバンダイビジュアル傘下に移行。そして2006年には社名を現在の「エモーション」に変更しました。この頃には、事業領域の拡大を図り、音楽出版事業以外にも積極的に進出していきます。

2009年には、バンダイビジュアルグループのレーベルであるランティスへ、音楽原盤権の管理業務を譲渡しました。これは、エモーションが持つ音楽事業のノウハウと資産を、より専門性の高い企業に託し、自社は新たな事業展開に注力していくという戦略的な決断だったと言えるでしょう。

音楽事業からの撤退後、エモーションはデジタルコンテンツ領域へと事業の軸足を移します。2009年2月にはウェブコミック配信サイト『YOMBAN』（現『Webコミックゲッキン』）を開設し、2010年には携帯コミック配信サイト『週2コミック!ゲッキン』も開設。編集・配信事業に本格的に参入しました。さらに、2010年12月には『ゲッキン』で連載された作品を書籍化する単行本レーベル『エモーションコミックス』（角川グループパブリッシングより発売）を創刊するなど、デジタルコンテンツ市場における存在感を高めていきました。

エモーションは、アニメーション作品のプロデュースにも携わっており、数々の作品が世に送り出されました。代表的な作品としては、テレビアニメ『CANAAN』『ティアーズ・トゥ・ティアラ』『ONE PUNCH MAN』、OVA『T.P.さくら』『マジンカイザーSKL』などがあります。これらの作品は、それぞれのジャンルにおいて高い評価を得ており、エモーションのプロデュース能力の高さを示すものとなっています。

しかし、2011年、エモーションはバンダイビジュアルに吸収合併されました。これは、激化するデジタルコンテンツ市場において、より大きな組織力が必要と判断された結果であると考えられます。吸収合併後も、エモーションが培ってきたノウハウや人材は、バンダイビジュアルの事業に活かされていると推測されます。

バンダイビジュアルのビデオグラムレーベル「EMOTION」とは、法人としてのエモーションとは直接的な関係はありません。バンダイビジュアルが運営するレーベル名として使用されている「EMOTION」は、株式会社エモーションの事業内容や歴史とは切り離して考えるべきです。

エモーションは、音楽出版事業からデジタルコンテンツ配信事業へと事業展開を変化させ、アニメ業界に多大な貢献を果たした企業でした。その歴史は、日本のアニメーションとデジタルコンテンツ市場の変遷を象徴するものであり、今後も日本のエンターテインメント業界における重要な一頁として記憶されるでしょう。

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