エリクトニオス

エリクトニオス

エリクトニオス（Ἐριχθόνιος、Erichthonios）は、古代ギリシアの神話に見られる人物であり、特にアテーナイとトロイアにおいて重要な役割を果たしています。彼には二つの異なる伝承がありますが、最もよく知られているのはアテーナイの王としての彼の物語です。

アテーナイの王エリクトニオス

アテーナイの王エリクトニオスは、主に鍛冶神ヘーパイストスと女神アテーナーまたは大地の女神ガイアから生まれたと言われています。彼は初代アテーナイ王ケクロプスに似ているとされ、上半身は人間、下半身は蛇であったとの伝承があります。彼の誕生は非常に神秘的で、彼の母であるアテーナーがヘーパイストスに迫られた際に生じた出来事に由来しています。神話によると、ヘーパイストスはアテーナーに求愛し、拒否された後に精液が地面に落ち、それがエリクトニオスを生むことになりました。

彼は女神アテーナーの保護を受けて育てられ、アテーナイの王としてさまざまな業績を残しました。特に注目すべきは、アムピクテュオーンを追放し、自ら王の座を占めたことです。彼はアクロポリスにアテーナーの木像を建立し、さらにはパンアテーナイア祭という祭りを創設しました。この祭りはアテーナーを奉るもので、アテーナイの人々にとって重要な行事となりました。

エリクトニオスの功績

また、彼は馬を初めて軛に繋いだ革新者としても知られています。戦車の使用に関しては、彼がヘーリオスのような技術を持ち、ゼウスからもその偉業によってぎょしゃ座に昇華されるほどでした。加えて、彼はスキタイの王インドスが発見した銀をアテーナイにもたらしたともされています。

トロイアの王エリクトニオス

エリクトニオスはトロイアにも別の伝承として知られており、トロイア王ダルダノスの子であるとの説があります。彼は河神シモエイスの娘アステュオケーとの間に子供をもうけ、その息子がトロスと言われています。『イーリアス』の中で、彼は豊かな王と描写されており、特に3000頭の牝馬を所有していたことで知られています。さらには、北風神ボレアースの干渉によって生まれた優れた牡馬たちも彼の名声を高めています。

トロイアのエリクトニオスもまた、豊かな土地を象徴する存在であり、彼の馬たちは穀物の上を跳ねることができ、海をも自由に走り回ることができたとされています。彼の物語は、トロイアの初期の歴史において重要な役割を果たしています。

総括

エリクトニオスは、アテーナイとトロイアの二つの地において神話的な存在であり、彼の物語はそれぞれの文化における豊かさや神聖な血統の象徴として重視されています。彼の誕生、育成、そして王としての業績は、ギリシア神話の中でも重厚で複雑なストーリーの一部を成しています。

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