エリザベッタ・ゴンザーガの肖像

エリザベッタ・ゴンザーガの肖像

『エリザベッタ・ゴンザーガの肖像』は、イタリアのルネサンス時代に活躍した巨匠ラファエロ・サンツィオによって1504年頃に制作された肖像画です。この作品は、ウルビーノ公爵グイドバルド・ダ・モンテフェルトロの妻であるエリザベッタ・ゴンザーガを描いたものであり、現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に収蔵されています。

モデルについて

エリザベッタ・ゴンザーガは1471年に、マントヴァ侯爵フェデリーコ1世・ゴンザーガとその妻マルガレーテの間に生まれました。彼女は1489年にウルビーノ公爵グイドバルドと結婚しましたが、病弱な夫との間に子供は生まれませんでした。そのため、彼女はグイドバルドの姉の息子であるフランチェスコ・マリーア1世・デッラ・ローヴェレを養子として迎えました。

エリザベッタは当時の宮廷文化の象徴的な存在であり、芸術や文学に対する深い理解を持った女性として知られていました。特に、彼女はバルダッサーレ・カスティリオーネの著作『廷臣の書』に登場し、完璧な女性として称賛されています。1516年には教皇レオ10世のために亡命を余儀なくされ、1526年にはフェラーラでその生涯を閉じました。

制作と帰属の歴史

この肖像画の制作年や作家に関する議論は続いており、過去にはさまざまな芸術評論家や美術史家がラファエロ以外のアーティストの作品ではないかと指摘してきました。しかし、現在ではラファエロの作品として広く受け入れられています。制作年に関しても、最初期の作品とされることもあれば、彼のフィレンツェ時代の作品とする説も存在しています。

作品の特徴

ラファエロは、エリザベッタ・ゴンザーガを厳密な正面像で描写しています。彼女の顔と胸元は画面の中心に配置され、両腕は省略されているのが特徴です。エリザベッタは黒いドレスを身にまとい、これは当時流行していたガムッラという婦人服とされています。特に目を引くのは、ドレスに施された独自の模様や、金のアクセサリーです。首にかけている金のチェーンはシンプルであり、彼女の優雅さを際立たせています。また、広い額に飾られた黒いサソリの形をしたアクセサリーは、エリザベッタの運を象徴しているとも解釈されています。

作品の背景には、穏やかで美しいウンブリア地方の風景が描かれており、ラファエロはその風景表現にも技術を注いでいます。ドレスの影とエリザベッタの肌色とのコントラストを利用した細やかな技法は、北方ルネサンスの影響を受けていることを示唆しています。

来歴

この肖像画は、1631年にウルビーノ公爵家の記録に初めて登場し、後にメディチ家のコレクションに加わったと考えられています。しかし、当初はラファエロの作品ではないとされることもありました。多くの研究者がこの作品の起源や制作年について異なる意見を持っているため、エリザベッタ・ゴンザーガの肖像は今なお議論の余地がある重要な芸術作品として評価されています。

ラファエロはこの作品を通じて、エリザベッタの教養や美しさを際立たせ、彼女の存在を永遠に記録しました。

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