エリザベート (ヴェルマンドワ女伯)

エリザベート・ド・ヴェルマンドワ：激動の時代を生きた女伯の生涯

エリザベート・ド・ヴェルマンドワ（1143年 - 1183年3月28日）は、中世フランスのヴェルマンドワ女伯であり、フランドル伯フィリップ・ダルザスの妃としても知られています。彼女は、その生涯を通じて、複雑な家族関係と政治的な駆け引きに翻弄されながらも、自身の領地を統治し、歴史に名を残しました。

生い立ちと家族関係

エリザベートは、ヴェルマンドワ伯ラウル1世と、その2番目の妻ペトロニーユ・ダキテーヌの間に生まれました。父ラウル1世には、最初の妻エレオノール・ド・シャンパーニュとの間に生まれた異母兄ユーグがおり、エリザベートは誕生時、伯位継承権第2位でした。その後、弟ラウル2世の誕生により継承順位は3位に下がりますが、妹エレオノールの誕生により、彼女の家系はさらに複雑化しました。

母ペトロニーユは、アリエノール・ダキテーヌの妹であり、このためエリザベートはイングランド王リチャード1世およびジョン王の従姉にあたります。また、両親の結婚は当初、教会法に反するとされましたが、後に教皇によって承認され、エリザベートの相続権が認められました。父ラウル1世は、後に母ペトロニーユと離婚し、再婚しますが、エリザベートの相続権には影響しませんでした。

結婚と相続

1152年、父ラウル1世が亡くなると、異母兄ユーグがヴェルマンドワ伯位を継承しました。その後、ユーグが伯位を辞退し修道士となったため、弟ラウル2世が伯位を継承し、エリザベートは再び継承権第1位となりました。1159年、エリザベートはフランドル伯フィリップ・ダルザスと結婚。翌年には、弟ラウル2世がフィリップの妹マルグリットと結婚し、両家は緊密な関係を築きました。

ヴェルマンドワ女伯として

1167年、弟ラウル2世がハンセン病で死去し、エリザベートはヴェルマンドワ伯領を相続し、夫フィリップと共同統治を始めました。この結果、フランドルの勢力は拡大し、フランス北部の力の均衡を大きく変える可能性がありました。

しかし、夫婦関係は必ずしも円満ではありませんでした。1175年、夫フィリップはエリザベートの姦通を発見し、愛人を殺害。その後、フィリップはフランス王ルイ7世からヴェルマンドワ伯領の完全な支配権を獲得しました。1177年には、フィリップが聖地へ向かう際、妹マルグリットとその夫であるエノー伯ボードゥアン5世を相続人に指名しました。

死とその後

エリザベートは、1183年3月28日に39歳または40歳で亡くなり、アミアン大聖堂に埋葬されました。彼女の死後、ヴェルマンドワ伯領の継承を巡り、妹エレオノールと、フィリップが指名したマルグリットとの間で争いが勃発しました。最終的に、フランス王フィリップ2世が介入し、エレオノールがヴェルマンドワ伯領を相続することになります。エリザベートの生涯は、中世ヨーロッパにおける政治と権力、そして複雑な家族関係が絡み合った、激動の時代を象徴する出来事と言えるでしょう。

エリザベートは、その生涯を通じて、自らの領地を統治し、政治的な影響力を持ち続けました。彼女の存在は、当時の社会における女性の役割を考える上で、重要な事例の一つです。また、彼女の死後に起きたヴェルマンドワ伯領の継承問題は、中世ヨーロッパの政治史を語る上で欠かせない出来事として、今も語り継がれています。

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