エリスロシン

エリスロシン（赤色3号）について

エリスロシンは、食品用タール色素に分類される赤色の合成着色料です。一般的には「赤色3号」という通称で知られています。食品添加物としてのE番号は「E127」が与えられていますが、生体への有害性が指摘されており、一部の地域では食品への使用が禁止されています。

構造と性質

エリスロシンの分子式はC20H8I4O5で、分子量は約835.9です。ナトリウム塩とした場合はC20H6I4Na2O5となり、分子量は約879.9になります。ナトリウム塩にすることで水溶性が向上します。

エリスロシンは有機ヨウ素化合物であり、分子内にπ電子雲が広がっています。これにより、可視光領域に吸光波長を持ち、赤色の色素として利用されます。常温常圧では赤色から褐色の固体で、水溶液の吸光波長の極大は524nmから528nmです。ただし、光に対して不安定で、直射日光に当たると変色する欠点があります。また、酸性条件下では水溶性が低下し、色が薄くなる傾向があります。一方で、熱や還元剤に対しては比較的安定です。

さらに、エリスロシンはタンパク質と結合しやすい性質があり、タンパク質の染色によく用いられます。

危険性

エリスロシンはタンパク質と結合しやすいため、摂取した場合に生体タンパク質に影響を与える可能性が指摘されています。動物実験では、マウスへの経口投与におけるLD50（半数致死量）は6.8g/kg、ラットでは2g/kg以上と推定されています。

ラットに2年間、エリスロシンを5%添加した飼料を与えた実験では、成長に悪影響が見られました。一方で、2.5%添加の飼料を1年間与えた実験では、腫瘍の発生は見られませんでした。しかし、雄ラットに大量投与した場合、甲状腺腫瘍が発生したとの報告もあります。マウスの高用量投与では腫瘍が見られず、ラットの腫瘍はラット特有のホルモン機構によるものとされています。

日本では、エリスロシンは天然に存在しない添加物に分類されるものの、食品添加物としての使用が認められています。しかし、ドイツやポーランドなどでは食品添加物としての使用が禁止されています。米国では、食品医薬品及び化粧品法のデラニー条項に基づき、ラットでの発がん性が確認されたため、2027年1月からは食品添加物としての使用が禁止されます。

用途

エリスロシンは、工業製品用の着色料として利用されることがあります。また、一部地域では食品添加物の着色料としても使用されています。食品用としては、耐熱性を活かして焼き菓子に、耐還元性を活かして発酵食品に利用されます。タンパク質への染着性が良いことから、蒲鉾などの畜肉製品の染色にも用いられます。

しかし、酸性条件下では無色化するため、炭酸飲料や酸味の強い飴など酸性の強い食品には使用できません。

まとめ

エリスロシンは、鮮やかな赤色を呈する合成着色料ですが、その安全性については多くの議論があります。使用の際には、これらの特性や危険性を理解しておくことが重要です。

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