エリス・M・ザカライアス

エリス・マーク・ザカライアス・シニア：情報将校、そして平和への貢献

エリス・マーク・ザカライアス・シニア（1890年1月1日 - 1961年6月27日）は、アメリカ海軍の軍人であり、海軍少将でした。第二次世界大戦中には海軍情報部次長を務め、戦後はNBCのドキュメンタリー番組「Behind Closed Doors」のナレーターとして知られています。

生い立ちと初期のキャリア

フロリダ州ジャクソンビルで生まれたザカライアスは、1912年にアナポリスの海軍士官学校を卒業。戦艦アーカンソーに着任し、タフト大統領のパナマ運河視察の護衛任務に従事しました。その後、バージニアや調査艦ハンニバルでの勤務を経て、第一次世界大戦では砲術士官としてピッツバーグに乗り組みました。

日本との関わり

ザカライアスの経歴で特筆すべきは、日本との深い関わりです。大使館付武官として日本に約3年間赴任し、関東大震災の直前に帰国しました。1931年には、昭和天皇の弟である高松宮宣仁親王夫妻がアメリカを訪問した際、日本滞在経験を買われ、夫妻の接待役を務めました。

1930年代後半にはアメリカ海軍情報局に所属し、ワシントンDCで山口多聞と対峙したり、ロスアンゼルスで日本海軍のスパイ、フレドリック・ラットランドを二重スパイとして勧誘したりするなど、情報将校として活動しました。

第二次世界大戦と終戦工作

第二次世界大戦中、ザカライアスは重巡洋艦ソルトレイクシティの艦長を務め、ドーリットル空襲の際には、ハルゼー提督率いる第16任務部隊（空母エンタープライズ、ホーネット）の護衛を担当しました。

1945年4月、海軍情報部から戦争情報局に転任。情報収集を通じて、日本の政府や軍に和平を望むグループが存在することを確信したザカライアスは、海軍長官ジェームズ・フォレスタルを説得し、日本の和平派を後押しするための「OP-16-W」プログラムを開始しました。このプログラムでは、短波放送を用いた対日心理作戦（ザカライアス放送）が実行され、日本の降伏を促す一助となりました。ザカライアスの進言と活動は、フォレスタルが「無条件降伏」の内容を緩和する意見を支持するきっかけとなりました。

戦後の活動と晩年

1946年に心臓発作のため退役。34年に及ぶ軍務を終えました。その後は、テレビ番組「Behind Closed Doors」のナレーターを務め、冷戦時代を舞台としたスパイ活動を描いたドキュメンタリーで、その情報将校としての経験を活かしました。彼は番組の各エピソードの終わりに解説を加え、視聴者に深い洞察を提供しました。

1961年、ザカライアスは心臓発作によりニューハンプシャー州の自宅で死去。アーリントン国立墓地に埋葬されました。彼の妻クララ・ミラーも後に同地に埋葬されています。息子であるエリス・M・ザカライアス・ジュニアも海軍兵学校を卒業し、戦艦ミズーリに乗組むなど、父の足跡を辿りました。

著書

ザカライアスは、その情報活動の経験を基に、いくつかの著書を執筆しました。主な著書として、以下のようなものがあります。

『密使』（土居通夫訳、改造社、1951年）
『日本との秘密戦』（新岡武訳、日刊労働通信社、1958年）

エリス・マーク・ザカライアス・シニアは、情報将校としてだけでなく、平和を追求した人物として、その名が記憶されるべきでしょう。

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