エリック・カズ

エリック・カズ（Eric Kaz）は、1946年 1月21日にニューヨーク州ブルックリン区で生まれた、アメリカ合衆国のシンガーソングライターです。彼は自身の歌唱活動も行っていましたが、特に他のアーティストに提供した楽曲によって、音楽界にその名を広く知られています。

カズの音楽キャリアは多岐にわたります。彼はソロアーティストとして、数枚のスタジオ・アルバムを発表しました。初期の作品にはエリック・ジャスティン・カズ名義のものもあります。また、彼はバンドの一員としても活動しました。1960年代後半には、サイケデリック・ロック・バンドとして知られるブルース・マグースにメンバーとして参加し、彼らの4枚目と5枚目のアルバム、『ネヴァー・ゴーイン・バック・トゥ・ジョージア』と『ガルフ・コースト・バウンド』の制作に携わりました。さらに、1970年代後半には、ピュア・プレイリー・リーグのクレイグ・フラーやブラッド・スウェット・アンド・ティアーズのスティーヴ・カッツといった著名なミュージシャンたちと共に、グループ「アメリカン・フライヤー」を結成。このグループでは、ユナイテッド・アーティスツ・レコードから2枚のアルバムをリリースしています。

パフォーマーとしての大規模な商業的成功は限定的だったものの、ソングライターとしてエリック・カズは数十年にわたり一貫して音楽業界の第一線で活躍し続けています。彼が手掛けた楽曲は、ジャンルを超えて数多くのヒットを生み出しました。そのソングライターとしての才能は高く評価され、ASCAP（米国作曲家作詞家出版者協会）やCMA（カントリーミュージック協会）といった権威ある団体から、数多くの称賛や賞を受けています。彼の楽曲は、ポップスやR&Bチャートでトップ10入りしたほか、カントリー界の大スターであるジョージ・ストレイトが歌いカントリー・チャートでNo.1を獲得した曲や、マイケル・ボルトンらが歌唱したアダルト・コンテンポラリー分野での多くのヒット曲など、幅広い成功を収めています。

エリック・カズが作曲または共作した楽曲で、特に著名なものや多くのアーティストに歌われた作品は以下の通りです。

「Love Has No Pride」（リビー・タイタスとの共作）：リンダ・ロンシュタットのバージョンが特に有名ですが、ジョニー・キャッシュ、ボニー・レイット、ロッド・スチュワート、トレーシー・ネルソン、ジェーン・モンハイトなど、非常に多くのアーティストによってカバーされています。
「Winter Light」（ズビグニェフ・プレイスネル、リンダ・ロンシュタットとの共作）：リンダ・ロンシュタットやサラ・ブライトマンが歌唱しています。
「Cry Like a Rainstorm」：ボニー・レイットやリンダ・ロンシュタットの歌唱で知られています。
「I Won't Be Hangin Round」：リンダ・ロンシュタットが歌いました。
「Gotta Get Away」：イーグルスの元メンバー、ランディ・マイズナーによって歌われました。
「Angel」、「River of Tears」：ブルース・シンガーとして名高いボニー・レイットが歌唱しました。
「Sorrow Lives Here」：リンダ・ロンシュタットの楽曲です。
「Still Hold On」：キム・カーンズ、タニヤ・タッカー、スージー・ボガスらがカバーしています。
「There's a Need」（キキ・ディーとの共作）：キキ・ディー自身の楽曲です。
「I Cross My Heart」：ジョージ・ストレイトが歌い、カントリーチャートでNo.1ヒットとなりました。
「The Vows Go Unbroken (Always True to You)」：ケニー・ロジャースが歌いました。
「I'm Gone」：アリソン・クラウス・アンド・ユニオン・ステーションが歌いました。
「Hypnotize the Moon」：クレイ・ウォーカーが歌いました。
「All I Have」：ベス・ニールセン・チャップマンが歌いました。
「(I am) Blowing Away」：ボニー・レイット、リンダ・ロンシュタット、シェール、ジョーン・バエズなど、多くの著名な女性アーティストが歌唱しました。
「Heartbeat」（ウェンディ・ウォルドマンとの共作）：俳優としても活動するドン・ジョンソンが歌いました。

また、エリック・カズは映画音楽の分野にも貢献しています。特に、ブライアン・デ・パルマ監督の初期の作品でその才能を発揮しました。ロバート・デ・ニーロが主演した1968年の『ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン/BLUE MANHATAN1・哀愁の摩天楼』や1970年の『ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン/BLUE MANHATAN2・黄昏のニューヨーク』といった作品では、観る者の心に残る印象的なテーマソングを含む楽曲を提供し、映画の世界観を豊かにしました。

エリック・カズのスタジオ・アルバムには以下のものがあります。

『If You're Lonely』 (1972年、Atlantic) - エリック・ジャスティン・カズ名義
『Cul-De-Sac』 (1974年、Atlantic)
『Craig Fuller / Eric Kaz』 (1978年、Columbia) - クレイグ・フラーとの共作
『1000 Years Of Sorrow』 (2002年、Slice Of Life)
『Eric Kaz*』 (2015年、Slice Of Life)

このように、エリック・カズは自身のソロ活動やバンドへの参加に加え、何よりも優れたソングライターとして、アメリカのポピュラー音楽シーンにおいて多大な影響を与え続けている存在です。彼が生み出した楽曲は、世代を超えて多くのアーティストによって歌い継がれ、現在もなお世界中のリスナーに愛されています。

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