エリック・スタージェス

エリック・ウィリアム・スタージェス：南アフリカのテニス界の英雄

エリック・ウィリアム・スタージェス（1920年 5月10日 - 2004年 1月14日）は、南アフリカ・ヨハネスブルグ出身の著名なテニスプレイヤーです。彼は第2次世界大戦後の混乱した時代においても活躍し、南アフリカのテニス史に名を刻んだ選手の一人です。スタージェスは、4大大会の男子シングルス決勝に3度進出しながらも惜しくも優勝を逃した名選手として記憶されています。特に男子ダブルスでは1947年の全仏選手権で優勝し、さらに混合ダブルスでは4度のタイトルを獲得するなど、その技術力と戦略が光りました。彼のテニススタイルは、特にショットのパワーに頼らず、正確なグラウンド・ストロークと優れた戦術に特化したものでした。

来歴と初期の人生

スタージェスは広告業者の家庭に生まれ、おじにはクリケット選手のJ・T・ハーンがいました。少年時代は会計士を志しつつも、1939年には南アフリカテニス選手権でシングルス優勝を果たします。しかし、第二次世界大戦の勃発により南アフリカ空軍に入隊、その経験は彼のその後の人生に大きな影響を与えることになるのです。

戦争中はイタリアで従軍していましたが、彼が操縦していた飛行機が敵の攻撃で撃墜され、ドイツの捕虜となります。「大脱走」で知られるドイツ第3空軍収容所（Stalag Luft III）での囚われ生活を経て、彼は約2ヶ月後に解放され、南アフリカに帰還しました。戦後は学業を断念し、テニスの道に進むことになりました。

テニスキャリアの頂点

スタージェスの国際的なテニスキャリアは1947年から1952年までの間に集中的に展開されました。彼は1947年の全仏選手権で、男子シングルス、男子ダブルス、混合ダブルスの全てで決勝に進出し、男子ダブルスと混合ダブルスで優勝を果たしました。彼のダブルスパートナーは同じく南アフリカ出身のユースタス・ファニンおよびシーラ・サマーズでした。この年、男子シングルス決勝ではハンガリーのヨージェフ・アシュボードに敗れましたが、南アフリカの選手として初めての快挙を達成しました。続く1948年の全米選手権では、アメリカのスター選手パンチョ・ゴンザレスに敗れ、再度の準優勝となります。

続く挑戦とダブルスでの栄光

1949年には混合ダブルスで驚異的な成果を上げ、全仏選手権、ウィンブルドン選手権、全米選手権での3連勝を成し遂げました。この快挙はスタージェスの名前をさらに広めることになったのです。また、1960年の全豪選手権には唯一の出場となり、シングルスのベスト4まで進出し、ダブルスと混合ダブルスでは準優勝を成し遂げました。この年の彼の混合ダブルスパートナーは、オーストラリアの選手ジョイス・フィッチでした。

彼は1951年と1952年のウィンブルドン選手権で男子ダブルスの決勝に進出しますが、惜しくも2年連続して準優勝。この時期、彼はシングルスでも着実に成績を残し、毎年のようにベスト8に進出し、特に1949年と1951年には準決勝まで進出しました。

引退後の生活

1952年に結婚した後、スタージェスはテニス界を離れ、南アフリカ国内での試合に出場することが多くなりました。しかし、アパルトヘイト政策が強まる中、スタージェスも国際的非難の対象となり、特にインドでは差別的なプラカードに直面するなど、厳しい状況に直面しました。その後、彼の経営するスポーツショップが強盗に遭い、閉店に追い込まれました。

その後はゴルフに情熱を注ぎ、シニアハンディキャップ2にまで上達。最晩年には「ゴルフに影響が出るから、もうテニスはやめたよ」との言葉を残しています。波乱に満ちた人生を送ったエリック・スタージェスは、2004年 1月14日にヨハネスブルグの自宅で83歳で亡くなりました。戦後のテニス界で特異な存在感を示した彼は、今もその業績と記憶が語り継がれています。

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