エリック・ベネイ

R&B/ネオ・ソウル界で高く評価される歌手、エリック・ベネイ（本名: Eric Benét Jordan）は、1966年 10月15日にアメリカ合衆国ウィスコンシン州ミルウォーキーで生まれました。彼の音楽スタイルは、ソウルフルなボーカルと洗練されたプロダクションが特徴です。

幼少期からキャリア初期

幼い頃からエリックは音楽に囲まれた環境で育ちました。特に父親が愛聴していたクラシック音楽は、彼の音楽的素養に大きな影響を与えたと言われています。音楽キャリアの第一歩として、彼は姉のリサ、そして従兄弟のジョージ・ナッシュ・ジュニアと共にグループ「ベネイ」を結成しました。1992年にはグループ名と同じタイトルのアルバムをリリースし、約7万枚を売り上げるなど、一定の成功を収めました。しかしこの時期、彼の私生活には悲劇が訪れます。恋人タミーとの間に娘インディアを授かったものの、タミーは翌1993年4月に交通事故でこの世を去ってしまいました。

ソロアーティストとしての台頭

深い悲しみを乗り越え、エリック・ベネイはソロアーティストとしての道を歩み始めます。1994年に大手レーベルであるワーナー・ブラザース・レコードと契約を結び、1996年にはソロデビューアルバム『トゥルー・トゥ・マイ・セルフ（True to Myself）』を発表。この作品は音楽評論家から高い評価を受け、彼の洗練された音楽性と歌唱力が広く認知されるきっかけとなりました。

1999年にリリースされたセカンドアルバム『ア・デイ・イン・ザ・ライフ（A Day in the Life）』は、彼のキャリアにおける決定的なブレイクスルーとなります。このアルバムからは、タミアとのデュエット曲「スペンド・マイ・ライフ（Spend My Life）」が大ヒットを記録し、2000年度のグラミー賞にもノミネートされるなど、商業的・批評的に大きな成功を収めました。また、TOTOの楽曲をカバーした「ジョージー・ポージー（Georgy Porgy）」では、人気R&Bシンガーのフェイス・エヴァンスがフィーチャーされ、こちらも話題となりました。『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』自体も、ソウル・トレイン・ミュージック・アウォードでベスト・R&B/ソウル・アルバム部門を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。この時期、彼はアース・ウィンド・アンド・ファイアーの30周年記念CD制作に参加するなど、他の著名アーティストとのコラボレーションも活発に行っています。

俳優活動と私生活の試練

エリック・ベネイは音楽活動に加えて、俳優としても活動の幅を広げました。テレビシリーズ『For Your Love』で俳優デビューを果たし、2001年には歌手のマライア・キャリーが主演した映画『グリッターきらめきの向こうに』にも出演しています。

私生活では、1999年に人気女優のハル・ベリーと婚約し、2001年1月に結婚しました。メディアからも注目される華やかな結婚生活でしたが、残念ながら長続きせず、2003年には別居、2005年に正式に離婚が成立しました。

また、この頃、新たなアルバム『Better & Better』を完成させていましたが、レーベル側の意向により正式な発売が見送られるという出来事もありました。

その後のキャリアと評価

私生活での変化を経て、エリック・ベネイは再び音楽に深く向き合います。2005年6月にはアルバム『ハリケーン（Hurricane）』をリリース。同年発生したハリケーン・カトリーナの被災者支援のためのチャリティシングル「Heart Of America」では、マイケル・マクドナルドやワイノナ・ジャッドといったジャンルを超えたアーティストと共演し、社会貢献活動にも参加しました。この年には約6年ぶりに日本を訪れ、ライブパフォーマンスでファンを魅了しました。さらに2007年には東京ジャズフェスティバル出演のために再来日しています。

2008年にリリースされたアルバム『愛すること、生きること。（Love & Life）』に収録されたシングル「You're the Only One」は、全米のR&B/ヒップホップ・ソング・チャートで4週連続1位を記録する大ヒットとなりました。この成功は彼のキャリアにおける重要な節目となり、2009年度のグラミー賞ではR&B部門の最優秀男性歌手賞と最優秀アルバム賞の2部門に再びノミネートされるなど、高い評価を獲得しました。彼は2009年にも立て続けに2度来日しており、日本での人気の健在ぶりを示しました。

私生活では、2011年7月31日にマニュエラ・テストリーニ（かつてプリンスの妻であったことでも知られる）と再婚し、新たな家庭を築いています。

エリック・ベネイは、フュージョン界の著名なミュージシャンであるジェフ・ローバーやグループ「フォープレイ」とも共演するなど、幅広い音楽性を持っています。情感豊かでソウルフルな歌声と、R&B、ネオ・ソウル、時にはジャズやフュージョンの要素を取り入れた洗練されたサウンドで、今なお多くのファンを魅了し続けています。

ディスコグラフィ

発表された主なアルバムは以下の通りです。

『トゥルー・トゥ・マイ・セルフ』 (True to Myself, 1996年、Warner Bros.)
『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』 (A Day in the Life, 1999年、Warner Bros.)
『ハリケーン』 (Hurricane, 2005年、Friday / Reprise)
『愛すること、生きること。』 (Love & Life, 2008年、Friday / Reprise)
『ロスト・イン・タイム』 (Lost in Time, 2010年、Reprise)
『ザ・ワン』 (The One, 2012年、Jordan House / EMI)
『フロム・E・トゥ・ユー (Vol.1)』 (From E to U: Volume 1, 2014年、Jordan House / Warner)
『エリック・ベネイ』 (Eric Benét, 2016年、Jordan House)

外部リンク

エリック・ベネイ公式ウェブサイト
ワーナーミュージック・ジャパンによるアーティストページ
公式Twitterアカウント
公式Instagramアカウント

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