エルギン・マーブル

エルギン・マーブルについて

エルギン・マーブル（Elgin Marbles）は、古代ギリシャ・アテナイにあるパルテノン神殿を飾るために作られた一連の彫刻です。これらは19世紀初頭にイギリスの外務官である第7代エルギン伯爵トマス・ブルースによって、オスマン帝国の許可を得て切り取られ、イギリスに持ち帰られました。現在、これらの彫刻は大英博物館に展示されています。

歴史的背景

エルギン・マーブルは、紀元前5世紀に建てられたパルテノン神殿に起源を持ちます。この神殿は、アテナイの丘に位置し、古代ギリシャの文化と信仰の象徴でもあります。1800年、エルギン伯はオスマン帝国のイスタンブールに赴任し、パルテノン神殿の調査を開始しました。彼は神殿の彫刻に強い関心を持ち、当時のスルタンからの許可を得て、多くの彫刻を取り外し、イギリスに持ち帰ることに成功しました。この背景には、ナポレオンの軍勢によるフランスのエジプト遠征後、イギリスとオスマン帝国との関係が良好だったことがあります。

19世紀前半にこれらの彫刻がイギリスで展示されると、当時のロマン主義の影響を受けた多くの人々が古代ギリシャの文化に対する憧れを抱くようになりました。しかし、その一方でエルギン伯の行為は一部の人々から非難され、特に著名な詩人ジョージ・ゴードン・バイロンなどが彼の「略奪」を強く批判しました。

返還要求と現状

エルギン伯は1816年、国内の批判や巨額の負債を考慮し、エルギン・マーブルをイギリス政府に寄贈しました。この結果、大英博物館に展示されることとなりました。その後も、エルギン・マーブルの返還を求める声は根強く、特に1970年代からはギリシア政府が強く要求を唱えるようになりました。文化・科学相として知られるメリナ・メルクーリは、映画女優でもあり、返還運動の先駆者として有名です。しかし、両国の意見は依然として対立したままです。現在、アクロポリス博物館では、オリジナルの彫刻とともにエルギン・マーブルの精巧なレプリカが展示されています。

色彩と文化的影響

また、21世紀に入ってからの研究により、エルギン・マーブルを含む古代ギリシャの彫刻は、もともとは白い大理石ではなく、色彩豊かなものであったことが分かってきました。古代ギリシャの彫刻は、当初は古代エジプトなどの影響を受けて鮮やかに彩色されていたとされています。しかし、1930年に行われた清掃作業で、彫刻表面が無断で強く研磨されたため、残念ながらその色彩の痕跡は失われてしまいました。この事態により、ギリシア側からの返還要求がさらに強まる要因となりました。

まとめ

エルギン・マーブルは古代ギリシャの文化の象徴であり、その歴史や影響は多くの議論を呼んでいます。彫刻に残された痕跡は、当時の文化や理念、そして国際的な法律や道徳観にも関連しており、文化財の返還問題は今なお解決を見ていません。

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