エルザタワー55

エルザタワー55：川口の象徴、超高層マンションの歴史

エルザタワー55は、埼玉県川口市元郷に位置する、地上55階建ての超高層マンションです。1998年に竣工し、2004年にアクティ汐留が建設されるまでは、日本で最も高い住居建築物でした。

歴史と背景

川口市は、かつて映画『キューポラのある街』の舞台にもなった鋳物の街として知られていました。エルザタワー55が建つ元郷地区も、かつては多くの鋳物工場が集積していました。しかし、時代の流れとともに工場は移転や廃業が進み、その跡地が新たな開発の舞台となっていきました。

1982年、大京は広大な日本ピストンリング川口工場跡地を買収し、大規模複合開発プロジェクト「ライオンズスクエア」をスタートさせました。総事業費は約540億円。その目玉として建設されたのが、エルザタワー55でした。

特徴的な構造と設計

エルザタワー55は、地下1階、地上55階建てで、総戸数は650戸。当時の最高価格は最上階の5LDKで1億7680万円、平均価格は4000万円台でした。「日本一」というキャッチフレーズで、即日完売したことでも話題になりました。

設計を手掛けた竹中工務店は、従来の超高層住宅には不足していた「コミュニティ形成の場」に着目し、「立体コミュニティ」という新しいコンセプトを提案しました。これは、住戸を120戸から180戸ごとの「近隣区」に分け、それを縦に積み重ねることで、垂直方向に広がる街を創り出すというものです。

各近隣区には、廊下の手摺の色分けや、コミュニティコアと呼ばれる共有施設が設置され、住人同士の交流を促しました。具体的には、

10階：キッズライブラリー
20階：クラフトルーム
29階：和室サロン
36階：スカイスタジオ
43階：ゲストルーム
55階：スカイラウンジ

といった施設が設けられています。さらに、1階にはアトリウムロビー、シースルーエレベーター、そして緑豊かな植栽空間が整備され、住みやすさを追求しています。また、建物外周には修景池を設けることで、落下物から人を守る役割も果たしています。

大規模修繕工事

竣工から15年以上が経過した2013年頃から、大規模修繕工事の議論が始まりました。設備の老朽化に対応するため、シミズ・ビルライフケアが施工業者に選定され、約2年かけて外壁塗装、防水工事、シーリング材の打ち替えなどが行われました。工事費は約12億円に上り、全額が修繕積立金で賄われました。

周辺環境

エルザタワー55の周辺には、商業施設棟「ライオンズスクエア川口」や、保育園、医療施設などが整備されています。2002年には、隣接地に「エルザタワー32」も竣工しました。さらに、川口市に一部敷地を提供し、2011年には川口市立元郷南小学校が新築移転するなど、地域社会にも貢献しています。

立地と交通

エルザタワー55は、東京都との境である荒川に近い南平地区、元郷に位置しています。京浜東北線川口駅や国道122号線にも近く、2001年には埼玉高速鉄道線も開通し、最寄り駅は川口元郷駅となりました。川口駅からは、「元郷・エルザタワー循環」というバスも運行されています。

埼玉高速鉄道線 川口元郷駅から徒歩6分
京浜東北線 川口駅から徒歩18分
* 国際興業バス 元郷・エルザタワー循環（川24）エルザタワー前停留所

まとめ

エルザタワー55は、単なる高層マンションではなく、川口の歴史と新しい都市開発が融合した象徴的な存在です。その特徴的な構造や設計、充実した共用施設、そして周辺環境は、住む人々に快適で豊かな生活を提供しています。現在もその存在感は薄れることなく、川口のランドマークとして輝き続けています。

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