エルタ・システムズ

エルタ・システムズ (ELTA Systems Ltd)

エルタ・システムズは、イスラエルを代表する防衛関連企業の一つであり、特に高度な電子システムと技術に強みを持っています。イスラエル航空宇宙産業（Israel Aerospace Industries, IAI）の主要な子会社として、幅広い分野で革新的な製品とサービスを提供しています。

企業概要と歴史

1967年に設立されたエルタ・システムズは、当初イスラエルの産業分散政策の一環として、アシュドッド市に拠点を構えました。同社は、レーダー技術をはじめとする電磁センサー分野や、電子情報（ELINT）、通信情報（COMINT）といったシギント（信号諜報）、C4ISTAR（指揮、統制、通信、コンピューター、情報、監視、標的捕捉、偵察）、電子戦（EW）、通信システム、さらには自律型地上システムやサイバーセキュリティ関連の製品・サービス開発を専門としています。電磁センサーやその他の先端技術を基盤とした防衛システムの設計・製造を行うシステムハウスとして、その地位を確立しています。

事業領域と製品

エルタ・システムズが手掛ける製品は、多岐にわたる防衛・安全保障ニーズに対応しています。主な用途としては、情報収集、監視、標的捕捉、偵察（ISTAR）、早期警戒および制御（AEW&Cなど）、国土安全保障（HLS）、プラットフォームの自衛、火器管制、そして増大するサイバー脅威への防御などが挙げられます。これらのシステムは、陸海空の様々なプラットフォームや地上施設に統合されることを想定して設計されています。同社は、顧客へのサービス提供にも注力しており、世界各地にマーケティングネットワークとアフターサービス体制を展開しています。

主要部門

エルタ・システムズの活動は、いくつかの専門部門によって支えられています。

防空・海軍システム部門: レーダー技術開発の中心であり、様々なレーダーセンサーやそれらを組み込んだ高度なシステムを担当しています。画像諜報、監視・偵察、防空、自己防衛、標的捕捉、火器管制といった用途に対応するシステムに加え、国土安全保障向けに地上・沿岸国境保護、空港や港湾などの国境通過地点の保安、民間航空機の自衛システム、さらにはテロ対策や都市の緊急事態対応を支援するシギント情報収集システムなども提供しています。
SIGINT・EW・通信部門: 電磁センサー技術を基盤とした、高度なシギント、電子戦、通信システムの開発・製造に特化しています。秘密情報収集（電子情報・通信情報）、プラットフォームや部隊の自衛、敵の電子活動を妨害・無力化する電子戦、そして高度なデータリンクや衛星通信を含む通信アプリケーション向けのシステムを手掛けています。
航空機搭載システムおよびレーダー部門: 空中早期警戒制御（AEW&C）プログラムのような大規模な航空機搭載システムの設計、開発、統合、および管理を行うシステムハウスとしての役割を担っています。
科学技術部門: エルタ・システムズ全体の技術的基盤を支える部門です。最先端のコア技術を開発し、小型化されたマイクロ波モジュール、アンテナ、送信機、信号処理装置といった各種アプリケーションに不可欠なスーパーコンポーネントやサブシステム、さらに特殊な自動試験装置などを内部で製造する能力を提供しています。また、この部門はグループ全体の製造、調達、物流の中心でもあります。
マイクロ波部門: マイクロ波伝送技術に関する幅広いアプリケーションに取り組んでいます。
ランドシステムズ部門: 地上システムに関連する分野を担当しています。

業績と市場展開

エルタ・システムズは国際市場で高い存在感を示しています。例えば、2018年には約3億3780万ドルの売上を計上しました。このうち約9割は世界の50カ国以上へ輸出されており、残りの約1割が国内市場向けです。イスラエル国内においては、イスラエル国防軍の主要なサプライヤーの一つとしての役割を果たしています。

また、同社は海外での事業展開にも積極的です。イスラエル国内に加え、ヨーロッパや南米などに子会社や関連会社を所有しており、世界の多数の防衛関連企業との間で協力協定を締結しています。防衛市場だけでなく、準軍事組織や商業分野向けの市場においても活動を展開しています。

特筆事項

2017年には、米国におけるエルタの北米部門が、当時のドナルド・トランプ大統領が提唱したメキシコとの国境壁の試作品開発プロジェクトに関連し、約50万ドルの資金を受け取ったことが報じられています。

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