フォード・フィエスタ

フォード・フィエスタ：小型車の歴史を彩る名車

フォード・フィエスタは、1976年に欧州フォードが発売したBセグメントの小型ハッチバックです。長きに渡る歴史の中で、世界各国で販売され、数多くのドライバーに愛されてきました。本記事では、フォード・フィエスタの歴史、デザイン、メカニズム、そしてモータースポーツにおける活躍について詳細に解説します。

各世代の変遷

初代 (MK I、MK II / 1976年 - 1989年)

初代フィエスタは、成長著しいヨーロッパの小型ハッチバック市場をターゲットに開発されました。改良された1.0L/1.1Lエンジンを搭載し、FF駆動方式を採用。カロッツェリア・ギアのデザイン協力を得て、スタイリッシュな3ドアボディを実現しました。1977年には1.3Lモデルを追加。日本にも輸入され、北米市場にも進出しました。1983年には、MK IIとしてフェイスリフトを受け、外観を一新しました。

2代目 (MK III、MK IV / 1989年 - 2002年)

1989年、フルモデルチェンジでMK IIIが登場。5ドアモデルもラインナップに加わりました。1995年にはフェイスリフトを行いMK IVに。マツダとの提携関係により、日本市場には導入されませんでしたが、ヨーロッパではマツダから「121」として販売されました。この世代は、後のKaやプーマの原型となった重要なモデルです。

3代目 (MK V / 2002年 - 2008年)

2002年のフルモデルチェンジでは、マツダ・デミオと共通のプラットフォームを採用。高い操縦性と快適性を両立させました。ボディタイプは3ドアと5ドア、エンジンは1.3L、1.6Lガソリンエンジンと1.4Lディーゼルターボエンジンを設定。日本には、5ドアの1.6Lガソリンモデルが導入されました。2005年には、高性能モデル「ST」も追加されました。

4代目 (MK VI、Mk VII / 2008年 - 2019年)

2008年、フルモデルチェンジで登場した4代目は、フォードの世界戦略車として約140カ国で販売されました。ヨーロッパではベストセラーモデルとなり、日本でも2014年に再上陸を果たしました。コンパクトなボディながら、高出力・低燃費エンジンや充実の安全・快適装備を搭載し、高い商品力を誇りました。デザインは「Kinetic Design」を進化させた「New Global Design Language」を採用し、アストンマーティンを思わせるフロントマスクが特徴です。

5代目 (MK VIII / 2017年 - 2023年)

2017年に登場した5代目は、ドイツのケルン工場で生産されました。ホットハッチのST、クロスオーバーのActive、商用車のVANなど、バリエーションも豊富に展開されました。2021年にはマイナーチェンジを実施。安全性やデザインの向上、高性能モデルへのマトリックスLEDヘッドライトの採用などが行われました。しかし、2023年6月末に生産が終了し、47年の歴史に幕を閉じました。

デザインとインテリア

エクステリアは、滑らかな曲線を描く「ワンモーションフォルム」を採用。インテリアは、高級感のある素材と高い質感にこだわり、快適な空間を実現しました。フロントシートはホールド性、リアシートは柔らかなクッション性を重視。運転席は、チルト＆テレスコピック機構とシートリフターにより、最適なドライビングポジションが可能です。荷室容量は、5人乗車時で276L、リアシートを倒すと960Lに拡大します。先進のサウンドシステムやリアビューモニター、バックソナーも標準装備されています。

メカニズム

エンジンは、1.0L～1.6Lのガソリンエンジン、1.5L～1.6Lのディーゼルエンジンをラインアップ。特に1.0L EcoBoostエンジンは、2年連続で「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した高性能エンジンです。低燃費と高出力、環境性能を両立しています。トランスミッションは、5/6速MTと6速DCT（PowerShift）が用意されました。

安全装備

安全装備は充実しており、複数エアバッグ、低速時自動ブレーキシステム「アクティブ・シティ・ストップ」、横滑り防止システム「アドバンストラック」などを標準装備。事故時の被害軽減に大きく貢献しました。

モータースポーツ

フィエスタは、モータースポーツでも活躍しました。WRCでは、Mスポーツが開発したWRカーが数々のタイトルを獲得。プライベーター向けにも、R2、R5、Rally3規格の車両が提供され、世界中で人気を博しました。パイクスピーク・ヒルクライムやラリークロスでも好成績を残しています。

まとめ

フォード・フィエスタは、47年の歴史の中で、常に進化を続け、世界中のドライバーに愛されてきた小型車です。その高い商品力、デザイン性、そしてモータースポーツでの活躍は、今後も語り継がれるでしょう。生産終了は残念ですが、その歴史と功績は、自動車史に大きな足跡を残しました。

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