エルンスト=ギュンター・シェンク

エルンスト=ギュンター・シェンク:ナチスドイツ軍医、そしてヒトラーの最期を目撃した証人



エルンスト=ギュンター・シェンク (1904年10月3日 - 1998年12月21日) は、複雑な過去を持つドイツ医師です。親衛隊中佐の階級にまで上り詰め、ダッハウ強制収容所での活動、ヒトラーの側近としての経験、そして戦後の有罪判決と、彼の生涯は数々の重要な出来事と深く関わっていました。

ダッハウ強制収容所人体実験

シェンクは当初、内科医としてキャリアをスタートさせました。1933年には突撃隊に入隊し、その後ダッハウ強制収容所で勤務することになります。そこで彼は収容所内に大規模なハーブ農園を建設し、武装親衛隊員へのビタミン補給に関する研究に従事しました。しかし、この活動の裏には、過酷な強制労働によって多くの囚人が犠牲になったという暗い事実が隠されています。さらに、彼は栄養補給に関する研究を名目に、囚人を対象とした人体実験を行い、多くの犠牲者を出したとされています。戦後、これらの行為により、シェンクは裁判にかけられ、有罪判決を受けました。

ヒトラーの最期:地下壕での医療活動と観察

1945年ベルリン攻防戦では、シェンクはヴェルナー・ハーゼ博士の下で戦傷者の治療に携わりました。ハーゼは熟練した外科医であったため、シェンクは彼の指導の下で手術を行いました。ハーゼがヒトラーの主治医であったことから、シェンクは総統官邸地下壕に入り、ヒトラーの様子を間近で観察する機会を得ました。彼はそこでヒトラーの病状を詳細に観察し、パーキンソン病の症状を示していることを確認したと述べています。この貴重な体験は、戦後、ヒトラーの健康状態に関する様々な議論において重要な証言となりました。

戦後と著作活動

ソ連軍の捕虜となったシェンクは、1953年に解放され、西ドイツに帰国しました。ダッハウでの残虐行為と人体実験に対する責任を問われ、有罪判決を受けましたが、一方で、ヒトラーの晩年における健康状態に関する証言者としての役割も果たしました。シェンクは、ヒトラーの主治医であったテオドール・モレル博士に関する著作、『Dr. Morell. Hitlers Leibarzt und seine Medikamente』を始め、ヒトラーの健康状態、ベルリン陥落時の状況などについて、複数の書籍を著しています。これらの著作は、ナチスドイツ末期の歴史研究において貴重な一次資料として扱われています。主な著作は以下の通りです。

『Dr. Morell. Hitlers Leibarzt und seine Medikamente』
『Das Notlazarett unter der Reichskanzlei』
『Patient Hitler. Eine medizinische Biographie』
『Ich sah Berlin sterben. Als Arzt in der Reichskanzlei』

メディアへの登場

シェンクの生涯は、映画『ヒトラー 〜最期の12日間〜』においても取り上げられました。この映画では、俳優のクリスチャン・ベルケルがシェンクを演じています。映画は歴史的正確性について議論の的となることもありますが、シェンクという人物がナチスドイツ末期の歴史において、重要な役割を果たした人物であったことを改めて示すものとなりました。

まとめ:複雑な歴史的遺産

エルンスト=ギュンター・シェンクは、複雑な歴史的遺産を残した人物です。ダッハウ強制収容所での残虐行為への関与は、彼の生涯に暗い影を落としましたが、一方で、ヒトラーの晩年の健康状態に関して、貴重な証言と資料を提供したことも事実です。彼の経歴は、ナチスドイツ時代の医療倫理、そしてヒトラーの最後の数日間の様子を知る上で、無視できない存在となっています。彼の残した著作は、歴史家や研究者にとって、貴重な情報源であり続けるでしょう。

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