エレミヤ

エレミヤ

エレミヤ（Jeremiah）は、旧約聖書の『エレミヤ書』に登場する古代ユダヤの預言者です。ヘブライ語では「ヤハウェが高める」という意味の名を持ち、紀元前7世紀末から紀元前6世紀前半にかけて、バビロン捕囚の時代に活動しました。彼は、南ユダ王国の祭司の家系に生まれ、神の言葉を人々に伝える預言者としての使命を全うしました。

生涯と預言活動

エレミヤは、ヨシヤ王の治世第13年（紀元前627年）に預言者としての召命を受けます。当初、彼は若さを理由に固辞しようとしますが、神の励ましを受けて預言者としての道を歩み始めます。彼の預言は、主に「北からの災い」、つまりバビロニアによる侵略と捕囚を警告するものでした。その背景には、民が唯一の神から離れてバアル信仰に走ったことへの神の怒りがあると説きました。

エレミヤは、民に悔い改めを呼びかけましたが、その言葉は当時の人々には受け入れられませんでした。特に、ヨヤキム王の時代には、率直すぎる預言活動が反感を買い、命の危険を感じるほどでした。当時、楽観的な預言をする人々が人気を集める中で、エレミヤは苦悩し、神にその苦しみを訴え続けます。彼は、正しい者が苦しみ、不正を行う者が繁栄するという現実を嘆き、神の正義を問い続けました。

また、エレミヤは侵略者であるネブカドネザル2世を「神の僕」と称し、イスラエルの戦火を神の意思であると預言しました。このため、ユダヤ人からも激しく攻撃されました。彼の言葉は、当時の人々にとって受け入れがたいものであったのです。ゼデキヤ王の時代には、彼は投獄され、最終的にバビロンによるエルサレムの破壊とバビロン捕囚を経験することになります。その後、総督ゲダルヤの庇護下で活動を続けますが、ゲダルヤ暗殺後の混乱でエジプトに連行され、その地で生涯を終えたとされています。

エレミヤの預言は、絶望的な状況下で人々に希望を与えるものでした。彼の言葉は、弟子であるバルクによって記録され、後世に伝えられました。

エレミヤに関する伝承

ラビ文学では、エレミヤはモーゼと対比されることが多く、その預言者としての重要性が強調されています。キリスト教の伝承では、彼はエジプトでユダヤ人国粋派によって石打ちにされ殉教したとされています。また、別の伝承では、エレミヤが祈祷によってエジプトを災厄から救い、エジプト人から崇敬されたと伝えられています。

著作と筆者問題

伝統的に、エレミヤは『列王記』上下、『エレミヤ書』、『哀歌』の著者とされています。これらの著作は、エレミヤが口述し、弟子バルクが筆記したと考えられています。

まとめ

エレミヤは、旧約聖書において重要な預言者の一人であり、バビロン捕囚という歴史的な転換期に、神の言葉を伝え続けた人物です。彼の預言は、当時の社会に対する批判であると同時に、絶望的な状況の中でも希望を失わないというメッセージを人々に与えました。彼の生涯と著作は、後世の宗教や文学に大きな影響を与えています。

参考文献

Friedman, Richard E. Who Wrote The Bible?, Harper and Row, NY, USA, 1987.
Abraham Joshua Heschel, The Prophets. HarperCollins Paperback, 1975. ISBN 0-06-131421-8

関連項目

エレミヤ書
アナトテ（アナトト）

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