エロヒスト

エロヒストについて

エロヒスト（ドイツ語: Elohist）とは、文書仮説という研究理論に基づいて、モーセ五書の形成に関与したとされる著者やグループのことを指します。エロヒストは、具体的には「エロヒム」の名称を使っていることから、その名が付けられました。エロヒストの資料は、特に北イスラエル王国に関連する伝承が中心であり、文書仮説の重要な要素として位置づけられています。

文書仮説の背景

文書仮説は、旧約聖書特にモーセ五書の成立背景を探る理論で、異なる伝承やスタイルを持つ複数の文書が組み合わさって作られたと考えられています。この理論の中で、エロヒストは「E資料」と呼ばれる文書を担う著者やグループとして重要視されています。また、「E資料」とは対照的に南部の部族に伝わる伝承を基にしたのが「J資料」で、これは「ヤハウィスト」と呼ばれる著者またはグループが関与しているとされます。

エロヒストの役割

エロヒストの資料は、主に北イスラエル王国における信仰や出来事を反映していると一般に考えられています。そのため、エロヒストは北部の部族に根ざした独自の信仰や歴史を表現していると言われています。特に、エロヒストの資料には神の名称として「エロヒム」が使われており、これが神観念の形成において重要な役割を果たしています。エロヒストの伝承は、北イスラエル王国の崩壊後、南のユダ王国に集まった人々によって新たに意味づけられました。

伝承の編纂と成立

エロヒストの文書は、おそらく北イスラエル王国が滅亡する際に亡命してきた人々によってジュダの人々に持ち込まれました。これにより、北部の伝承と南部の伝承が交わることとなり、最終的には「JE資料」という形で一つにまとめられたと考えられています。このようにして、エロヒストの役割は単に文書を作成しただけではなく、伝承の継承と文化の統合にも寄与したのです。

まとめ

エロヒストは、旧約聖書の背景を理解する上で欠かせない存在であり、その文書が後の信仰や歴史的理解に多大な影響を与えました。この文書仮説の研究は、現代の聖書学においても重要なテーマの一つとなっています。エロヒストやその伝承を巡る研究は、聖書の成り立ちや古代イスラエルの文化を考察する上で、非常に興味深い領域と言えるでしょう。

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