エロモナス属

エロモナス属（Aeromonas）とは

エロモナス属は、Pseudomonadota門ガンマプロテオバクテリア綱エロモナス目に属する細菌の一属です。グラム陰性の桿菌であり、かつてはビブリオ科に分類されていました。タイプ種はエロモナス・ヒドロフィラ（A. hydrophila）です。

特徴

形態: グラム陰性の桿菌で、シストを形成します。
代謝: 偏性好気性であり、カタラーゼとオキシダーゼ陽性を示します。グルコースを利用し、硝酸を還元する能力を持ちます。フォーゲスプロスカウエル試験は陰性です。
生育環境: 水中や動物から検出されます。トリプチケースソイ寒天培地やマッコンキー寒天培地で生育可能です。
運動性: エロモナス・ヒドロフィラのように極鞭毛を持ち運動性を示す種と、エロモナス・サルモニシダ（A. salmonicida）のように非運動性の種が存在します。
GC含量: 57〜63%です。

分類

エロモナス属は、多くの種を含みます。以下に代表的な種を挙げます（2024年8月現在）。

Aeromonas allosaccharophila
Aeromonas aquatica
Aeromonas australiensis
Aeromonas bestiarum
Aeromonas bivalvium
Aeromonas caviae (エロモナス・キャビエ)
Aeromonas dhakensis
Aeromonas diversa
Aeromonas encheleia
Aeromonas enteropelogenes
Aeromonas eucrenophila
Aeromonas finlandensis
Aeromonas fluvialis
Aeromonas hydrophila (エロモナス・ヒドロフィラ)：基準種
Aeromonas ichthiosmia
Aeromonas jandaei
Aeromonas lacus
Aeromonas lusitana
Aeromonas media
Aeromonas molluscorum
Aeromonas piscicola
Aeromonas popoffii
Aeromonas rivipollensis
Aeromonas rivuli
Aeromonas salmonicida (エロモナス・サルモニシダ)
Aeromonas sanarellii
Aeromonas schubertii
Aeromonas simiae
Aeromonas sobria (エロモナス・ソブリア)
Aeromonas taiwanensis
Aeromonas tecta
Aeromonas veronii (エロモナス・ベロニイ)

これらの種の中には、国際細菌命名規約（IJSEM）に正式に承認されているものと、未承認のものがあります。

病原性

エロモナス属の多くの種は、様々な生物に対して病原性を持っています。特に、エロモナス・ヒドロフィラは、ヒトに対して下痢や創傷感染症を引き起こすことがあります。また、魚類に対してはエロモナス・サルモニシダが伝染性 Furunculosis を引き起こすことが知られています。

医学的な重要性

エロモナス属による感染症は、免疫力が低下している人や、基礎疾患を持つ人に多く見られます。治療には、抗菌薬が用いられますが、薬剤耐性を持つ株も存在するため、適切な抗菌薬を選択する必要があります。

関連項目

壊死性筋膜炎：エロモナス属による壊死性軟部組織感染症が知られています。

参考文献

Michael T. Madiganほか著、室伏きみ子、関啓子監訳『Brock微生物学』オーム社、2003年4月。ISBN 9784274024887。
発酵研究所監修、大嶋泰治ほか編『IFO微生物学概論』培風館、2010年12月。ISBN 9784563078119。

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